記念大会

創立35周年記念大会・大会の表情

記念大会
矢嶋もと之
10月22日(土)は「柏市文化祭川柳大会あわせて東葛川柳会三五周年記念大会」が柏市中央公民館で開催されました。この記念大会の素晴らしい雰囲気を皆さんにもお伝えしたいと思います。

はじめに

大会の準備はもう数カ月前から江畑代表、五月女事務局長の下で綿密に練られておりました。

さて、当日は曇り空でしたが雨の心配もなく、川柳大会にはうってつけでした。私達、準備班は会場に9時半に集合して直ちに会場づくりに取りかかりました。皆さんもうすっかり心得ており、30分ほどで準備が完了。ホワイトボードには会次第が酒井千恵子さんによって墨痕鮮やかに記されております。早い方はもう10時過きに受付に来られました。受付には今回の目玉である当会幹事の鎌田ちどりさんの最初の句集『いちめん菜の花』(喜怒哀楽書房)が参加者へ手渡されました。鎌田さんは昨年、第十八回川柳とうかつメッセ賞を受賞され、江畑哲男代表はちどりさんを「感性が豊かで、句語が生きてる」と絶賛しております。

もう―つの目玉は東葛川柳会の歴史と足跡をDVDに残そうと決めたことです。完成すれば川柳界初の映像型記録集になります。既に作成の準備は着々と進んでおり、会員からは写真の提供を受けております。この日は数名の会員のインタビューも別室で行われると共に、大会の模様は総て記録に収められます。

本大会にはゲストも多く参加されました。特に台湾川柳会から杜青春代表が来日されました。また国内からも卑弥呼の里代表の真島久美子さんはじめ、全国各地からも著名な川柳作家が出席されるなどの賑わいを見せております。

開会行事、記念講演、記念句会

開会の挨拶 江畑代表

大会は午後1時半過ぎから、角田創さんの司会で、江畑代表の挨拶で始まりました。東葛川柳会は昭和62年10月24日に産声を上げ、今川乱魚代表(当時)54歳、江畑哲男34歳だったそうです。
川柳を愛し、川柳の周辺にある日本文化を愛する者の集まりで、その伝統は今も脈々と受け継がれております。
東葛川柳会は生涯学習の申し子で、「楽しく学ぶ」をモットーとするとの挨拶で締めくくられました。

記念講演「文芸と創作の伝統」石塚修先生

記念講演の後、いつものように藤田光宏さんによる気功が行われました。私たちは毎月の例会で慣れておりますが、初めての方も多く熱心にしておられるのが印象的でした。

感謝状贈呈

記念大会の名の下に、東葛川柳会のホームページの作成に貢献された根岸洋さんへ感謝状が贈呈されました。同氏は現在療養中で代わって山本由宇呆さんが感謝状を受け取られました。

来賓祝辞

台湾川柳会杜青春代表

私は杜さんと初めてお目にかかり、当初かなり年配の方かと想像していましたが、今年還暦だそうでびっくりしました。実は杜さんは早稲田大学卒業で江畑代表の後輩にあたります。

杜さんの祝辞はユーモアたっぷりの素晴らしい日本語でした。今回の来日の目的は、①東葛川柳会への祝辞、②再来年の台湾川柳会30周年へのお誘い,③集金とのことでした。会場の皆さんははてなという顔をしておりましたが、これは台湾川柳会の会費をコロナのために3年間徴収できなかったためと分かりました。台湾川柳会には日本から当会の遊人さんや成島静枝さんら数十人が参加されております。杜さんは2009年台湾川柳会に入会しましたが、当時知っていた日本の川柳は松江梅里の「命まで賭けた女てこれかいな」だ、そうです。会場は大いに沸きました。

同氏は祝辞の終わりで、川柳で人生の機微が分かって来るようになったと述べておられました。
(千葉県川柳作家連盟津田暹会長の祝辞は別ページに掲載しました。)

祝電の披露

全日本川柳協会、齋藤健元農林水産大臣など多くの団体や個人からの祝電が披露されました。

披講

いよいよ披講がスタートします。まず文台へ川崎信彰・日下部敦世両幹事が席に着きました。司会より本日の参加者は出席者130名、投句53名の合計183名との報告がありました。この参加者数は今年、千葉県内で開催された川柳大会で最も多いと思われます。私の隣りには3年ぶりに出席の北島澪幹事がおられました。

披講される句は約50句で、ほかにユーモア賞2句、特選3句が発表されました。ユーモア賞は乱魚氏以来の東葛の揺るぎない伝説です。

 宿題「ルール」 いしがみ鉄選(川柳研究社)

トップバッターはいしがみ氏でネクタイに同氏のセンスの良さが伺われます。氏は江畑代表と同学年でもう40年来のお付き合いだそうです。私も江戸川の句会に参加したことがありますが、選句には非常に厳しい方との印象があります。しかしこの日はにこやかに、会場によく通るお声で披講されておりました。

ユーモア賞

私は石ころである神である (水品団石)
俺よりも猫のご飯が先に出る(渡辺柳山)

特選

口づけの前に愛してると言って(江畑哲男)
消えゆく鼓動抱きしめてゆく宇宙(伊師由紀子)
戸惑いのふたりに恋の不文律(中嶋常葉)

プーチンの無法を神は許さない(いしがみ鉄)

 宿題「湯」 青木 薫選(東京みなと番傘川柳会)

同氏は江畑代表が数年前に立ち上げた選者研究会のメンバーでもあります。普段は非常に温厚な方ですが、句の批評となると厳しく、私などいつも到らぬ自分を思い知らされております。披講には氏の暖かさが滲み出ておりました。

ユーモア賞

水虫も元気にさせている足湯(矢嶋もと之)
モンローになってみました泡の風呂(棚田貞治)

特選

孫が来てぬるま湯ヒートアップする(吉村たい子)
このお湯は誰をしゃぶしゃぶするのだろ(水品団石)
産湯から始まる壮大なドラマ(宮内みの里)

ぬるま湯で低温火傷する蛙(青木 薫)

 宿題「食べる」 米島暁子選

米島暁子さんは凄いです。各地大会に出かけて選者として名を連ね、そのバイタリティーには脱帽しております。さらに今年は全日本川柳協会から全国川柳大会への30年連続出席者表彰も受けておられます。私も松戸の同人に加えて頂いておりますが、非常に気配りの人でもあります。その活動の源はお肉大好きから来ているようです。今日も素晴らしいファッションで、淀みなく入選句を読み上げておられました。

ユーモア賞

昆虫食ゴキブリだけはやはり無理(佐道 正)
生き物の命頂き生きている(坂部忠昭)

特選

庭の柿孫より先にサルが食べ(岩澤節子)
腹が減ってはいい句が出来ぬ(川瀬幸子)
青春のど真ん中です食いっ振り(谷藤美智子)

人間は怖いゲテモノまで食べる(米島暁子)

 宿題「晴れる」 川名信政選(東葛川柳会)

披講の最後は東葛川柳会独特の三句連記で、最低でも一句は入選になります。この選者は代表かベテランの方が担当しますが、今回は川名信政さんです。信政さんの選句のモットーはご自身が感動した句だけを選ぶことだそうです。披講時には真っ直ぐ参加者の方を向き、聞き取りやすいように意識されているように見受けられました。今回も百をはるかに越える句を一句ずつ丁寧に披講されておられました。お疲れさまでした。

ユーモア賞

予報士の子は晴れの日も傘を秘め(稲沢ひろせ)
運動会マイクテストはいつも晴れ(高橋 充)

特選

骨壷を開けてください日本晴れ(真島久美子)
晴れて立つ赤子でさえも自助努力(杉野ふみ子)
満点の星をハグする露天風呂(小菅八柳)

冤罪が晴れて広がる虚脱感(川名信政)

大会では出席者の呼名、選者と文台の呼吸もあっており、作品にどっぷりと浸ることが出来ました。これは大会の準備が万全であった事と、参加者のご協力の賜物と思います。また、今まで誌上でしかお名前を見たことのない方の呼名を聞くと、この方との距離が一気に縮む思いが致しました。大会ならではのご利益です。

表彰式

タイトル賞は柏市長賞他、6つの賞が用意されておりました。最高の市長賞には小菅八柳さん、また議長賞、教育長賞には川瀬幸子さん、伊師由紀子さんがそれぞれ授与されました。全日本川柳協会賞は谷藤美智子さん、千葉県川柳作家連盟賞は静岡の水品団右さん、柏市文化連盟会長賞は、杉野ふみ子さんが獲得されました。
本当におめでとうございます。

終わりに

朝9時半からの準備に始まり、最後の表彰式が終わった時にはもう午後4時半を過ぎておりました。長い一日でしたが、参加者の皆さんは川柳漬けの楽しい日を過ごされたことと思います。今日の大会から新たな刺激を受けて、さらに創作意欲を燃やされることと思います。また各地からお出で下さった人と、旧交も深められたことでしょう。そして江畑代表の挨拶にもありましたように、私たちは生涯川柳を楽しんで、豊かな人生を歩んでいきたいと思っております。

また来年、東葛川柳大会で是非お会い致しましょう。どうぞお元気で!

大会を取材するカメラ

大会の表情