記念大会

東葛川柳会創立三十六周年記念大会
大会の表情

記念大会
矢嶋もと之
  • 司会:角田 創
  • 記名:川崎信彰 日下部敦世
  • 会場:柏市中央公民館
  • 出席者111名、欠席投句者49名

今年も10月の第4土曜日、東聰川柳大会が開催されました。柏市の文化祭の一環として行われ36回を数えます。この日、柏駅から出るとちょっと冷やっとしましたが、雨の心配はなさそうでした。今日の会場は中央公民館でいつもとは少し駅から離れております。9時半集合でしたが、到着するともう書き垂れを準備するなど作業が始まっておりました。

はじめに

9時半に永見忠士幹事長の号令でそれぞれが決められた役ヘ段取り良く作業が進められ、あっという間に会場の準備が出来上がりました。これも綿密な予定表と役割が予め配られていた成果と感心致しました。私も会場の準備係でしたが、多くの協力者がおりテーブルを運んだだけで作業が終わりました。受付は11時半からですが、10時前にはもう準備完了でした。早速、幹事や協力者が受付を済ませ、披講会場の隣の部屋で句箋を書くことが出来ました。昨年に比べ受付から投句の流れがずいぶんスムーズになったと感じました。開場の1時間前ぐらいから参加者が続々お見えになりましたが、ベテラン揃いの受付はスムーズに流れを裁いておられました。

一方披講会場では式次第がいつものように酒井千恵子さんに依って墨痕鮮やかに記されて居りました。千恵子さんは全国大会の書道展で特選の常連と伺っております。句箋入れもステージに並べられ準備万端整いました。

今年の大会を仕切るのは副代表兼幹事長の永見忠士さんです。緻密な予定表の作成、また記念講演には相撲部屋のおかみさんを引っ張り出してきました。これには皆さんびっくりしておりました。更に新しいホームページも立ち上げるなど、東葛幹事長としての同氏の活躍には頭の下がる思いです。

代表挨拶・来賓祝辞・記念講演

12時半過ぎに大会が始まりました。司会はいつものベテラン角田創さんです。大会の参加者は出席が111名、投句が49名と、今年の千葉県内の川柳大会では最も多い部類でした。千葉県内だけではなく都内、茨城、埼玉などからも多く参加されておりました。

江畑哲男代表挨拶

昭和60年に第1回を開いてから昨年は35周年の記念大会、そして今年で36回目と先ず話を切り出しました。この間ずっと主導されてきた代表として感慨深いものがあると推察致します。最初に新たなホームページを最近開設したと紹介されました。また代表は挨拶の中で日本が幕末から明治にかけて「知のカ」で欧米に屈することなくアジアで独立を守り通すことが出来たと述べられておりました。そしてこれが生涯学習社会における「学び」に繋がり、東葛川柳会のモットー「楽しく学ぶ」にたどり着くのだと強調して壇を降りました。

なお私も新しいHPを拝見しましたが、以前とは比べ物にならないくらいあか抜けて素晴らしい出来栄えと感心しております。

江畑代表挨拶

来賓祝辞

山下洋輔千葉県議会議員

山下氏は柏市選出で柏を愛する人たちで作る「学び」の場、「かしわまちなかカレジ」を主宰されている少壮の議員です。簡潔なご挨拶の中で若い人に川柳のすそ野を広げたいと述べられておりました。このお話は高齢化に悩む川柳界にとってはぜひ実行して頂きたく、また私たちも大いに協力せねばと思いました。

記念講演「相撲部屋女将の奮闘記」(別掲参照

高砂部屋元おかみ 長岡恵氏

今までの講演とは違いなんと相撲部屋の元おかみとは、他の川柳大会とは一味も二味も違うさすがの東葛と感じ入ると共に、興味津々でありました。また壇上に上がったおかみさんの若さと美貌に二度びっくりしました。おかみさんは先ず一句詠まれました。「新弟子の勝って軽やか下駄の音」、良い句ですね。昭和61年に当時の大関朝潮と結婚したとのことです。馴れ初めは、大阪今宮恵比寿の福娘時代に遡るそうです。平成2年に高砂部屋のおかみになり、令和2年に高砂親方は定年退職され、30年のおかみ業に終止符を打たれました。講演内容については別の稿で紹介されていますので、そちらに譲ります。

この講演の一週間後、おかみさんのご主人が亡くなられたとのニュースにはびっくり致しました。謹んでお悔やみ申し上げると共に、そのような状況下でも明る<講演して頂いたおかみさんに厚く御礼申し上げます。

披講

記念講演終了後、藤田光宏さんによる気功で、先ず身体をほぐしました。この頃になると窓からの日射しが強く、室内は暑く感じるほどでした。文台は今年も東葛のベテラン川崎信彰さん、日下部敦世さんが務めました。

 宿題「部屋」名雪凛々選(千葉県川柳作家連盟)

同氏は今年4月、津田暹前会長から会長職を引き継がれました。ご存じのように素晴らしい柳歴は勿論のこと、大会等の組織運営にも多くの実績と経験をお持ちです。現在難しい局面にある千葉川柳界にとっては救いの女神のような存在です。几帳面な同氏をみんなで支えながら千葉県の川柳を盛り立てていきたいと思っております。今日も同氏は爽やかな笑みを浮かべながら、明る<披講をされておりました。

ユーモア賞

断捨離が部屋一杯に店開き(野澤 修)
目覚めては生きてる部屋を確かめる(増田幸一)

特選

母と子の部屋に童話が置いてある(笹島一江)
病床の独りぼっちは身に沁みる(月岡サチヨ)
母さんの子宮ゆかしい小宇宙(塚本康子)

六畳の隅に姉妹の文机(名雪凜々)

 宿題「福」平川柳選(東京川柳会)

同氏は現在、東京川柳会を主宰されております。またシェイクスピアなど西洋演劇や日本の古典にも精通された文学博士でもあります。私が知るだけでも東葛川柳会の昨年4月句会でゲスト選者を務められた以外に、今年の2月の選者研究会オープン講座で「川柳嗣号の現代的意義」と題して講演をされました。(要旨は『ぬかる道』本年4月号参照)。このように東葛とは御縁があり、また今日もご夫婦で大会にお見えになりました。披講ではマイクも必要が無いほどの素晴らしい声量で、会場を酔わせておられました。

ユーモア賞

福相と誉められあぐら団子鼻(谷山弘子)
福耳に貧乏神が棲みついた(海東昭江)

特選

絶頂の十七音に福あふれ(本間千代子)
透明なしあわせ大切に磨く(中嶋常葉)
福猫は角のそば屋でかくれんぼ(平 真澄)

福の色足せば渡れる虹の橋(平 川柳)

 宿題「モーニング」大竹洋選(東葛川柳会)

同氏は今や千葉県はもとより全国でも有数の達吟家として名が知れ渡っております。特に千葉県川柳誌『犬吠』の添削コーナーで、本来は刺身のツマのような欄を一躍世に知らしめました。同氏の丁寧かつ的確な添削で川柳の腕を上げられた方々も多いと聞いております。私にとっても同氏は川柳の師であります。課題はヒント、徹底的に辞書を調べて、課題が出たら速やかに作句せよと、句会育ちの同氏の蔵言です。お酒を飲みながらの同氏の川柳論に尽きることはありません。今日もまた歯切れ良く、聞きやすい披講をされておりました。

ユーモア賞

モーニング借りたらポケットに諭吉(高橋和男)
朝風呂が確かめている冷蔵庫(老沼正一)

特選

礼服を脱げば嬉しい酔いが出る(武者駿造)
もう後に引けぬ二人のモーニング(木下種子)
子の嫁ぐ朝は父親貝になる(柳 哲)

折角の老後庄助さんになる(大竹 洋)

 宿題「相撲」江畑哲男選(東葛川柳会)

今日の宿題は全部相撲に因んでおります。
モーニングは高砂部屋の朝潮、朝乃山の朝から取ったそうです。おかみさんは記念講演後に所用のためと帰られ、相撲尽くしの句を聞いていただけず残念に思っておりました。しかしこれは前に記したようにご主人の切迫した病状のためだったと解りました。東葛独特の三句連記を代表は一部コメントを交えながらいつものように披講されておりました。

ユーモア賞

横綱の決り手医師の診断書(武者駿造)
ゆるふんへ行事待ったにする安堵(六斉堂茂雄)

特選

親方の鋏へ堰を切る涙(伏尾圭子)
価値観の違う夫婦の四つ相撲(小菅八柳)
疲れました一人相撲の恋でした(海東昭江)

相撲道内館牧子から学び(江畑哲男)

表彰式賞(別掲参照

タイトル賞は柏市長賞をはじめ、五つの賞が用意されておりました。受賞者の皆さま、本当におめでとうございます。

終わりに

朝9時過ぎの準備から最後の表彰式が終わったときはもう4時を過ぎておりました。長い一日でしたが、皆さんリアル大会と記念講演を大いに楽しまれたことと思います。特に誌上でしかお名前を知らなかった各地の方々と親しくお話をすることも出来ました。更に1年ぶりに旧交を温めた方も多くおりました。私たちには生涯を共にできる川柳があり、川柳を通じて多くの知己がいます。これらを確かめることも出来た大会でした。また来年、この場でぜひお会い致しましょう。それまでは離れていても各柳誌を通じて皆様のご活躍を見守り応援しております。どうぞご健勝で!

来賓祝辞の山下洋輔千葉県議会議

披講前の気功指導は藤田光宏さん

参加者を待つ大会受付のサチヨさん、華泉さん、康子さん、圭子さん

選者の披講を聞き入る会場の皆さん

大会の表情

柏市文化祭川柳大会あわせて東葛川柳会三十六周年記念大会