ぬかる道巻頭言コラム

【『ぬかる道』第426号 巻頭言】
『今年は打って出る!』

ぬかる道巻頭言

巻頭言『今年は打って出る!』

江畑哲男

今年は「打って出る!」。コロナ下の”守り”から”攻め”に転じる。そんな意欲と決意を表明してきた。何だか、本当にそうなりそうな気配である。

具体的には、どう”攻める”?

① 句会を面白くする

まずは、句会。いっそう面白くしたい。川柳人が大好きな句会である。東葛らしく、明るく・生き生きとした、収穫の多い、そんな句会を展開していこう。

老若男女(「若」はいない!)のゲスト選者(プラス当会幹事)と宿題とのマッチングもさらに工夫していこう。世の中全体の動きを俯瞰しながら、不易流行・和洋折衷・古今東西、新旧・硬軟絢い交ぜ、さらに品詞の種類などをも考慮しつつ出題を考えてきた。これからも努力するつもり。”ライブ感”は句会のいのち。さらなる”磨き”をかけていきたい。

三月句会の宿題(三句連記)をご覧あれ。「可愛いお年寄り」(!?)である。「静かなる有事」とも言われる少子高齢化のまっただ中で、「お年寄りの生き方」を川柳的に追求しようという、何とも大胆な試み(!)である。少なくともそう考えて出題した。前例のないユニークな課題であろう。胸を張って、そう自画自賛する。

② 各地で講演会を展開する

“攻め”の第二は、各地講演会の企画・開催・実施だ。

(ア)4月21日(金)13時30分〜、市原市国分寺公民館で講演会を開催する。演題「川柳と日本語の魅力」(江畑哲男)。公民館講座の一環として開催されるものだが、市原周辺の川柳愛好者を元気づける機会になれば幸いだ。
(イ)柏市内での講演会。傘下勉強会の一つである「川柳会・江風」が開催に向けて鋭意準備中である。
(ウ)千葉県野田市や埼玉県南東部、茨城県南部などでも開催の可能性を模索している。
(エ)その他の地域でも、会場さえあれば出かけるつもりだ。会場だけは地域で該当者が確保して欲しい。開催にあたってのマニュアルその他はこちらで準備する。

③ 組織を鍛える

「チームワークの大切さ」は何度も説いている。前号巻頭言でも書いた。コロナ下では多少の抜かりがあったが、絆を太く・強くすべく組織のテコ入れを始めた。まずは、その整備。代表も含めて皆さん一定の年齢に達しているので、誰か一人が重い荷を背負う状態では立ちゆかなくなる。荷物は極力小分けしたい。小分けするには人材の質と量が必要になる。道理であろう。

実際には小分けするだけでは不充分で、各担当の長と担当間の意思疎通が重要。クラス組織で言えば、班(長)相互の連携とでも喩えたら分かりやすいだろうか?

そして、何より大切なのが会員の皆さんのご協力だ。出来る協力を出来る範囲でして欲しい。重ねてお願い申し上げる次第である。

組織整備の一環として、顧問を拡充することになった。新た当会顧問に就任していただいたのは、荒川佳洋先生。富島健夫研究会を主宰する、埼玉県春日部市在住の文芸評論家である。皆さん、どうぞよろしく。

コロナ下に於ける「プラス」ってあるの?

本号「短信」にも書いたことだが、過日北國新聞の取材を受けた。インタビューに答えながら、というよりインタビューを主導しながら(笑)、コロナ下に於けるプラスとマイナスについて小生なりの考えを述べさせていただいた。

たしかに、コロナは未曾有の困難をもたらした。世の中を変えた。変えつつある。この間の社会と人間をキーワードで表すならば、明でなく暗であり、プラスではなくマイナスであり、楽観ではなく悲観。鬱・否定・内向き・引き籠もり、といった有り難くない単語が次々と思い浮かぶ。

では、訊こう!コロナ下ではプラスの要素が全くなかったのか?マイナスばかりだったのか?いやいや、そんなことはないはずだ。プラスの要素としては、何があるか?多少こじつけめくが、次の点を挙げてみた。

多くの人が内省的になった。思慮深くなった。命の重みを実感した。生きることの意味を問いかける好機になった。お金では買えない価値があるということに気づかされた。個と社会、デジタルとアナログのバランスはどう取るべきかを、日本中で模索するようになった、……等々。

コロナが収束しつつあるいま、川柳に対する期待感が高まっている。川柳のような、明る<前向きで人間くさい文芸を求める声が高まっている。何しろ短くて、素のままの自分をさらけ出せるというのは、短詩型文芸の魅力。上げ潮に近いうねりを感ずる昨今である。

私・江畑哲男は以前からこう申しあげてきた。デジタルとアナログ、これからは2 ウエイで発信する必要がある、と。いみじくもこの「予言」がコロナで証明された。川柳の発信力という観点から言えば、今般お届けしたDVD『目で観る東葛川柳会』(デジタル)と、拙著『魔法の文芸ー川柳を学ぶ』(アナログ)。この両輪が揃うとカ強い。バランスがとれる。デジタルもアナログも二つあって、二つとも有り難い。そんな激励も頂戴している。

新学期の気分で

『ぬかる道』今月号には、平川柳氏の講演要旨を掲載した(22ページ)。選者研究会での成果を皆さんにもお裾分けしたいという気持ちからである。

麗澤大学のオープンカレッジ「川柳教室」は、今年も開講される。詳しくは短信欄をご参照されたし。オススメの本。『学問と野球に魅せられた人生』(池井優、芙蓉書房出版)、『世界のマネージョーク集』(早坂隆、中公新書ラクレ)。この二冊、ともかく面白い。

さてさて、マスクの要らない数年ぶりの春になった。若い世代のオシャレがまぶしい。春は進級進学の季節。何か新しいことに挑戦してみるのも一興か。モノみな輝く春を実感しながら、皆さん脳細胞を活性化させていこう!