毎朝聞いているラジオのパーソナリティが「今日のメール投稿テーマは先生です」と言うのが耳に入ってきた。「先生」か、と思いながら、読みあげられていくリスナーのメールが面白く、つい聞き入ってしまう。そして先生の中でも、あだ名をテーマに寄せられたものをパーソナリティが面白おかしく読んでいるとき、フッと思い出したのが、ペギラ先生のことだった。
中学の確か一年生だった頃、引っ越しをして転校をしたことがある。母親とこれから通うことになる中学へ初めて行き、職員室にまず入った。母親は担任の先生と何か話をしていて、私も隣に座って聞くともなしに先生の話を聴いていたが、その少しばかりの時間に、とても目立つオバ様を見かけたのだ。背は高く、それに釣り合う横幅もあり?その体格に負けない派手な衣装、紫のブラウスに白いミニスカート(当時大流行していた)化粧も濃い目で、逆毛を立てているのか、髪はボリュームよく頭の上で盛り上り茶褐色に染められていた。どう見ても、中学校の職員室という場所には、ちょっと不似合いのオバ様だった。
前の年まで小学生だった中一の私、とっさに想像が広がった。(ドラマや小説の中でしか知らないが、これが水商売とやらの女の人でママと呼ばれる人なんだ、きっと!)想像は続き(多分、子供が不良になっちゃって、親であるこのオバ様は呼び出されたんだろうなあ)。
あくまで50年以上前の子供の幼稚な発想であり、現在のコンプライアンス?では不適切かと思われますが、どうぞ時代を鑑みご理解くださいませ。
とにかく、そんな感想を抱きながら驚いてはいたが、職員室を出てしまうとそのオバ様のことは完全な他人事で、すっかり忘れていた。
新しい教室に入り、みんなに紹介されて自己紹介も済ませ着席する。新しい学校、教室、仲間、話しかけてくれる人もいて、そのうち友達もできるかナと思いながら、少し周りの席の友人の様子を観察する余裕も出てきたとき、何時間目だったのだろう。二、三人の男子が、教室の後ろの扉を少し開けて、これから始まる授業にやって来る先生を待っている様子。
そのうち「来た来た来た!ペギラ来たぞ!」と言いながら、すごいスピードで席に着いた。と、ほとんど同時に、ガラガラと扉が開いて先生が入って来た。
あの人だ!あの人だった!あの職員室で見たオバ様だったのだ。彼女はあのファッションの上に長いパリッと糊の効いた白衣を着て、チョーク箱と出席簿を抱えて教壇に立った。
私が想像に任せて勝手に職業まで決めつけていたオバ様は、なんと化学の先生だったのです。ペギラ先生は授業も面白く分り易く、また授業以外の行事のときなども、私達とよくワイワイおしゃべりをして、楽しい先生でした。
㊟ちなみに「ペギラ」は、当時のテレビ番組に出ていた怪獣の名前です。