ぬかる道巻頭言コラム

【『ぬかる道』第428号 巻頭言】
『今年は打って出る(そのⅡ)』

ぬかる道巻頭言

巻頭言『今年は打って出る(そのⅡ)』

副代表 永見忠士

新型コロナウイルス感染症拡大がようやく収束の時を迎えようとしています。感染症法上の分類が5類に移り、季節性インフルエンザと同じ扱いになりました。平時に近づいたという実感が街の賑やかさからも伺えます。

さて、本年度の東葛川柳会のテーマは『ぬかる道』4月号の巻頭言に、江畑哲男代表が「今年は打って出る」と述べられています。3年にわたったコロナ禍が、収束に向かった今こそ、守りから攻めに転じる時だ。そのために3つの施策(句会を面白くする、各地で講演会を展開する、組織を鍛る)を重点的にやっていこうという表明です。ではこの3つを具体的にどう実現するかを考察いたします。

東葛川柳会(会員約300人)は、本体のほかに6つの勉強会(各20〜30人)が傘下にあります。本体を含めこの組織がそれぞれ具体策を持ちPDC (計画Plan・実行Do・チェックCheck)の輪を繰り返せば素晴らしい成果に結びつくでしょう。

1. 句会を面白くする
(ア)選者の養成

選者研究会(主催江畑哲男・現会員30名・月1回)というユニークな勉強会を開催しています。句会の良し悪しを決めるのは、選者です。選者研究会は、選者の質と量を高める目的で開催され、メンバーを東葛川柳会傘下会員に限定しないで広く募集しています。

内容は、①自分の選と他人の選の比較、②著名講師の専門的知識の吸収、③『ぬかる道』から一句を選び選評(これは『ぬかる道』誌を熟読しなければならず、かなり勉強になります)。以上が選者勉強会の概況です。選者を目的とする人は、是非参加してほしいと願っています。

(イ)句会のエ夫

東葛川柳会の連営は、伝統と担当者のお陰でスムーズに運営されています。工夫は、句会の内容にあります。現在取り組んでいるのは、ゲスト選者と宿題のマッチング、魅力ある課題の設定です。いずれの設定も重要になります。さらに工夫が求められます。

(ウ)参加意識

句会を盛り上げるには、参加意識を持つことが有効です。その為に何か役を担っていただきたいのですが、現実は一部の人に偏っています。句会の役としては、会場予約・会場準備・受付・司会・投句集計・選者世話係・文台・背景等たくさんあります。何か一つでも担当すれば、句会への関心度は上がります。各人一つの担当を持っていただけたらと願っています。

2. 各地で講演会を実施する
(ア)講演会の開催

代表が『ぬかる道』4月号で発表されるとすぐ動いた勉強会があります。それは江風(小泉正夫会長)です。6月17日(土)、柏市中央公民館で江畑哲男講師が「川柳の魅力と日本語の魅力」という題で講演を行います。勉強会がまず動き出したことは嬉しいことです。他の勉強会への波及を期待しています。

(イ)講師の確保

講演会を実施するに際し、現在講師の役を務めているのは江畑代表一人です。これでは一人に負担が掛かり、開催回数に限界があります。講師の発掘と育成がこの施策を進めるにあたって課題です。課題解決に取り組みたいと思います。

(ウ)若年層へのアプローチ

川柳人の高齢化ははっきりしています。若年層の取り込みは必須です。しかし有効な具体策が見つからず年月が過ぎているのが現実です。小さな試みでも良いから、まずやってみることから始めましょう。柏市文化連盟が出している「後継者育成助成金」を使っての挑戦は試みる価値があります。

3. 組織を鍛える
(ア)組織運営への協力

本年3月末に、東葛川柳会を支えていた二人が退会しました。困ったのは後継者選びです。残った者も高齢者で、適任と思って依頼しても高齢を理由に辞退されます。仕方なく特定の人に集中してしまいます。これは一時しのぎで後顧に憂いを残します。仕事の分担は適正になされるべきで、会員の協力が必要です。会員の中には、川柳を作るために加入しているのであって、組織の運営にはかかわりたくない人もおられます。その考えももっともだと思います。だが組織があってこその川柳会ですので、組織連営にも協力をお願いします。

(イ)東葛川柳会の組織

東葛川柳会は、「総務・経理部」「句会部」「ぬかる道編集部」「ぬかる道配送部」という4つの部から成り立っています。その下に24の担当と特命担当が5、合計29の担当があります。担当の中には単純なもの複雑なもの種々ありますが、会員にはどれか一つ担当になっていただきたい。一つの担当でも東葛川柳会の一翼を担うことになります。或る程度の責任を持つことで会の一員としての自覚が生まれると思われます。

(ウ)ネットの活用

コロナのお陰で、ネットを通じて会合が容易になりました。ネット会議(Zoom)をフル活用して、組織を強固にしてゆきたいと考えています。
ネット会議の延長ですが、ネット句会という方法もあります。これは移動距離が無くなるため住んでいる地域の句会から全国区の句会に、更にはグローバルな句会へと展開が予想されます。さしずめ台湾から早速加入の打診があるかもしれません。会員が増えれば会の財政も豊かになるでしょう。このような新しい仕組みの挑戦は、組織に刺激を与えることになります。

コロナ禍が去ると、時代が変わっているはずです。もともと日本の伝統文化は、後継者難から絶滅危惧種と言われているものが多数あります。コロナ禍で本当に絶滅したものも多数あったと考えられます。

川柳界にもピンチがやってきました。やむをえず消えて行った吟社を多数見ています。しかし、ピンチはチャンスという諺の通り、コロナ禍が去った今こそ「打って出」れば、飛躍の大きなチャンスが転がり込んでくるかもしれません。東葛川柳会の皆さん。今はチャンスだと信じて、持続可能な川柳会を目指しましょう。