巻頭言『高齢者社会を直視して』
新年号にふさわしくない話題、シビアな話題から入ることをお許しいただきたい。
昨年(と言っても、この原稿を書いているのは令和5年12月。笑)小生は大病をしてしまい、皆さんにご心配とご苦労をおかけした。この場をお借りして皆さんのご厚情にまずは感謝申し上げたい。有り難うございました。
お陰さまで術後は順調。だが、馬力が衰えた。筋力も低下した。無理は出来ない。知力は三割ほどの減か?筋力ならぬ「金力」は元々ないし、なかった。こちらは変化ナシ。おっと、横道に逸れた。真面目な巻頭言に戻そう。
残念ながら「若い人」はいない
川柳界に平成生まれはほとんどいない。いたとしても、ごくごく少数だ。圧倒的多数が昭和生まれ。このキビシイ現実を川柳人はまず直視しないとイケナイ。
じつは、高齢者ほど高齢化の現実を受け止めていないようだ。受け止められないのかも知れぬ。なかには「理解」している方もおられよう。しかし、皆さん「アタマで分かったつもりになっている」だけなのではないか。
こんな事例があった。
(ア)高齢化著しい某団体の役員会で、珍しく「若返りを図ろう!」と全員一致。「すばらしい」「画期的なこと」と思いきや、90代半ばの大長老が提案・推薦したのがナント80代半ばの役員だった。「若返りのレベルが違う」と、60代後半の役員の落胆は大きかった。
こんな例も少なくない。
(イ)勇退を表明した趣味の会の会長が後任を探したが、後継者が見つからなかった。やむを得ず現会長が続投。会は先細りになり、とうとう解散する結果になった。
(ウ)某ボランティア団体の話。会長の片腕だったやり手のAさんが家庭の事情で一時退任を申し出た。その申し出に、温厚実直な会長は困り果ててしまった。その後、Aさんは会長の優柔不断をなじるようになり、ボランティア団体自体がギクシャクし始めた。A会長は他の構成員からも管理能力を問われるようになり、和気藹々だった団体自体がその後崩壊してしまったという。
……これらはいずれも他人事ではない。哀しいのは登場人物がいずれも「善人」だという点だ。いい人たちばかりなのに、なぜこんな結果になってしまったのだろうか?皆さんはもうお分かりであろう。
すばらしき昭和と、令和に横たわる課題
考えてみれば、こうした人たちの行動様式や思考は一概に責められない。いまの中高年は、総じて高度経済成長のなかで人生を送ってきたからだ。
会社も給料も自身の地位も、頑張れば上がっていった。子どもが産まれ、住宅を購入し、電化製品を次々揃えて生活を向上させていった。努力は必ず報われる、我慢すれば高みに登れる、それが昭和という時代であった。
人間関係もウエットだった。同年代の仲間はライバルも含めてたくさんいたし、自分より年下の人間たちも腐るほど存在した。何かあれば、「後進に道を譲る」「若い人たちに託そう」といった美学が成立した時代であった。
それが出来なくなった。残念ながら、高齢化という、このリアルで冷酷な現実を受け止めなければならない。令和に生きる高齢者はしかと胸に刻まねばならぬ。まさに「静かなる有事」なのだ。『未来の年表人口減少日本でこれから起きること』1 〜3 (河合雅司、講談社現代新書)を、もう一度読み返して欲しい。
対処方法はいくつか考えられる。
(b)高齢者が頑張る
(C)お金をかけてでも、仕事を外注する。
右についても、ボスの力量と構成員全員の意識変革が必要だ。そういう時代に間違いなく差しかかっている。
はてさて、これ以上書き続けていくと暗くなりそう。この項はこの辺でペンを擱かせていただく。要は、トップに求められるのは「高齢化の現実」をしかと受け止めること。コレに尽きる。重い現実を動かすにはお花畑思考ではダメ。思考も行動様式もリアリズムに徹するしかあるまい。
「意欲」の減退から老化が始まる
ゴメンナサイ。お口直しに本の紹介。『老いが怖くなくなる本』(和田秀樹、小学館新書)を読んだ。
小生が敬愛する和田秀樹精神科医はこう仰る。
前頭葉を刺激する頭を使い続けるヒント
老化というと、体や脳で起こることをイメージする人が多いと思いますが、「感情」も年を取るほどに老化していきます。しかも、感情の老化は、体や脳が衰える前に始まります。早い人だと40代ですでに感情の老化が始まっています。さらに、感情の老化やを放置してしまうと、体や脳の老化を加速させかねません。
感情の老化とはどのようなものかというと、「意欲がなくなる」「いろいろなことが億劫になる」「感情のコントロールがきかなくなる」「頭が固くなる」「感動しにくくなる」「自由な発想がしにくくなる」といった症状が出てくることです。原因は脳の前頭葉の萎縮です。……
そこで提案されていたのが下記だった。列挙しよう。
▽「一日一発見」を日課にする
▽「あれもこれも」やってみる
▽「知識」よりも「経験」
▽「インブット」よりも「アウトプット」
▽シニアこそSNSを積極的に活用しよう
▽人との会話は最高の「脳トレ」
▽年を取れば取るほど、一流のものを
和田先生の本は、読むといつも元気になる。有り難う!
①東葛川柳会新春句会。1月27日(土)。小島蘭幸理事長が選者、小生はミニ講演。前頭葉の活性化間違いナシ。
②千葉県川柳大会がこの秋我孫子で開催される。続報を待たれよ。以上、お願いと連絡。本年もどうぞよろしく。