ぬかる道巻頭言コラム

【『ぬかる道』第437号 巻頭言】
『句会はやっぱり楽しい』

ぬかる道巻頭言

巻頭言『句会はやっぱり楽しい』

江畑哲男

句会に賑わいが戻ってきた。コロナが明けて、ようやく賑わいを取り戻しつあるようだ。嬉しい。皆さんと一緒に喜び合いたい。何と言っても、川柳は句会が命。モチロン、投句者の皆さんも大切にさせていただいている(そして、その投句や自由吟の要素が東葛では大きい)が、条件が許すならばご出席してリアル句会を味わって欲しい。そう願う。先日の東葛川柳会新春句会には、新春らしい華やぎがあった。会場の生花、和装の出で立ちも含めたご出席者のファッション、さらには初出席者の方々もちらほら見受けられた。おかげさまで、「楽しく・賑々しく」今年初の句会を開催することが出来た。有り難うございました。

粋なお申し出

「句会を楽しいものにしたい」、「楽しい企画で会を盛り上げたい」、「新春句会らしくお祭りの要素があってもいのではないか?、そんな小生の願いが通じたのだろうか?ある会員から、(ええい、もう名前を出しちゃえ!八甲田さゆりさん(愛知県豊橋市)から粋な賞品をご提供いただいた。
舞台裏を明かそう。さゆりさんは、小生のブログを見て思いついたのだ、という。1月13日付け「江畑哲男熱血川柳ブログ」に、「新春句会の賞品にお酒を用意しました!」をアップした。その理由は「景気づけ」だった。暗い世相をせめて新春くらい明るく楽しいものにしたい、という小生なり意図だった。吟醸酒(四合瓶)を当日の賞品に加えた。その意気込みに共感し、「景気づけなら協力いたしましょう!」と、八甲田さゆりさんから小生にご連絡をいただいたのだった。

その賞品が笑える!何でも、阪神タイガース優勝の限定品をお持ちだそうで、景気づけに提供したいとのこと。焼酎ARE(アレ)、ワンカップのARE、ビールのAREほかの賞品を拙宅にご送付いただいた。

さゆりさんはさらにこうも付け加えた。「どうせなら、思いっきり巨人ファンの方に差し上げたいところです」と。たはははは。茶目っ気たっぷり。いたずらっ子そのまんまの笑顔が、電話の向こうに見えるようだった。そんな彼女の満面の笑みが容易に想像できた。そうそう、企画というのは楽しみながら進めるものなのだ。

「野球しようぜ!」

「野球しようぜ!」
もう一つ、会場を沸かせたのが日下部敦世幹事の披講だった。正確に言い直せば、披講前のショートスピーチであった。披講前の枕で、「大谷翔平選手のグローブとメッセージが届きました!」という情報を皆さんに披露したのだった。ココで出席者の皆さんのテンションが一気に上がる。えっ?そうなんだ!どんなメッセージ?

敦世幹事自身の語りかけも巧みだった、まるで大谷クンとお友だちであるかのような語り口(笑)で。それゆえ、会場は沸きに沸いた。かくして、ライブ句会の醍醐味を存分に味わうことが出来た。

学校関係者各位

貴校ますますご盛栄の事とお慶び申し上げます。
ロサンジェルス・エンゼルス・オブ・アナハイムのメジャーリーガー、大谷翔平です。

この手紙は、このたび私が学校に通う子供たちが野球に興味を持ってもらうために立ち上げたプログラムをご紹介するためのものです。
この3つの野球のグローブは学校への寄付となります。
それ以上に私はこのグローブが、私たちの次の世代に夢を与え、勇気づけるためのシンボルとなることを望んでいます。それは、野球こそが、私が充実した人生を送る機会を与えてくれたスポーツだからです。
このグローブを学校でお互いに共有し、野球を楽しんでもらうために、私からのこの個人的なメッセージを学校の生徒たちに伝えていただければ幸いです。
この機会に、グローブの寄贈をさせていただけることに感謝いたします。

貴校の益々のご発展をお祈り申し上げます。

野球しようぜ。大谷翔平

ことほど左様に、句会は楽しい。何と言っても、こういうわくわく感がイイ。

その大谷選手のメッセージ「野球しようぜ」ではないが、「川柳しようぜ」と言わんばかりの実践が富山県で行われた。題して「第一回ジュニア川柳甲子園」。ナント、開催日は、能登半島地震直後の1月14日(日)。にもかわらず、開催を果たした。ご立派!現段階では富山県版の取り組みであるが、今後の継続と発展に期待したい(日川協HP参照)。

ジュニアヘの働きかけは最も大切な事業の一つであろう。次世代への投資は未来への投資。未来を見据えて布石の打てないリーダーは失格。そんな業界は程なく衰退する。少子高齢化の厳しい現実に直面した現在では、ジュニアへの働きかけを否定する川柳人はいなくなった。しかし、かつての川柳界はヒドかった。

川柳誌へのジュニア欄設置に反対したり、ムダだと喘いたり。「川柳は大人の文芸」、「(ジュニアなんか)大人になったら川柳を止めちゃうさ」などと、公然と批判する輩が少なからずいたのだった。情けないことよ!川柳人の志の低さに唖然とした記憶がある。

この点、東葛川柳会は違った。よちよち歩きの創刊時からジュニア川柳欄を創設。今回寺井一也さんが難に遭って担当を辞退されたが、ジュニア欄は来月号から復活する。寺井一也さんのこれまでのご尽力に感謝申し上げるともに、新しい担当者にどうぞご期待下さい。

句会は楽しい。一方、「楽しいだけ」の句会であってはならぬ。根底には、確固たる指導理念と経営感覚が求められよう。指導者や指導理念を欠いた川柳(勉強)会は不幸である。羅針盤のない船のようなものかも知れない。キビシイ言い方だが、少なくとも小生は肝に銘じてコトに当たっているつもりだ。

「モノミナコハレ、ヒトミナブジ」

上は、前月号の「ポエムの貌」に掲載した電文である。いまこのフレーズがちょっとした話題になっている。

昭和23年6月に発生した福井の大地震の後、東京にいる兄(中野重治)のもとへ送った電報がコレ。発信者は詩人の中野鈴子。「モノミナコハレ、ヒトミナブジ(物みな壊れ、人みな無事)」。簡にして要を得た、見事な対句になっている。川柳の表現もかくありたいものだ。

いよいよ春本番。感性を磨くのに恰好の季節になった。