山田とまとエッセイ

映画「国宝」にハマった話

山田とまとエッセイ

「『国宝』観た?」このワード、昨年は流行語大賞の候補の中にもあったものです。もちろん大賞にはなりませんでしたが、この台詞を、私は知人友人にずいぶん投げかけたものでございます。

かく言う私は、この映画「国宝」にすっかりハマってしまいまして劇場で三回も観てしまい、文庫本上下巻の原作であるところの小説も二度読むハメになってしまった?のでありました。そんな「国宝」推しともいえる思いを綴ってみます。

最初は「国宝」という歌舞伎界を描いた映画がある、という程度の情報を仕入れただけで、封切り間もない昨年の六月にシネコンに向いました。ザックリとしたあらすじを知っているだけで、この映画はテレビでの事前宣伝も無く、よく出演者がテレビ番組に出て、「どうぞ劇場でご覧下さい」なんていうピーアールも全くなし、正直三時間の長丁場ということも知らぬまま、単なる興味を好奇心と暇つぶしで、足を運んだのでございます。

さて上映、しょっぱなから引き込まれ、ストーリーを追いながら、情景心理そして舞いにもすっかり魅入られてしまいました。作品に圧倒されたまま、エンドロールの流れる画面を眺めながら時刻を見ると「あれ?」二時間程過ぎているだけ、と思っていたのに三時間が過ぎており、少しも長くは感じなかった自分に驚きました。夢中になる、時間を忘れるという感動は久し振りのものでした。

すっかり夢中になった私は、その後何人かの友人に「いいよ!すごいよ!観てよ!」と興奮のまましゃべり、観たよという友とは互いの感動で盛り上り、「本物の歌舞伎観たくなるね」とも話しました。その後、実際歌舞伎ブームが起きたのは、ご存知の通りです。「本物の歌舞伎は料金高いから、映画をもう一回みようか⁈」なんてしゃべっていると、どんどんその気になり、それから十日と経たぬうちに、二度目を観に出かけていたのでございます。

二度目となると、上映時間が三時間も納得済みで、画面に飲み込まれてしまうこともなく少し冷静に鑑賞することができました。狂気の舞とも思えた屋上のシーンも意外と短い時間であったと分かりもしました。このシーンを長く感じた自分の感情は、原作を読むと納得できるものでもありました。

その後「国宝」の話題情報は、あちらこちらから耳に目に入ってきて、と言うより私の国宝アンテナが、もうそちら方面ばかりとなり、邦画売り上げ一位とか、俳優達の苦労の話とか、本家の歌舞伎界への影響、しまいには年末の流行語大賞の話題にまでなる始末。

私の中の国宝熱も醒めることなく、本屋に平積みにされている上下巻で千頁弱の文庫本を眺めながらウロウロ……関心はあるもののもう長編を読み切る自信もないしなぁと、横目に見ていました。

それが本を貸してくれるという友人が現われて、目が疲れても少しづつ読めば大丈夫と励まされ⁈こんどは活字で国宝と向き合うことになったのでございます。映像と活字は別世界と覚悟を決めて、読書開始。

こちらは映画にはもちろん描ききれない人物も多く出てきて、喜久雄(主人公)の父親のやくざの世界も歌舞伎の演目も詳しく説明があったりと、どちらの世界も知らない身の私には、面白く読み進めることができました。そしてン?これはシネマではどう描いていたっけ?という場面もあり確かめたくもなりまして、年が明けて今年一月またまた劇場へ。それにしても、封切り半年後にもまだ、シネマコンプレックスで一日一回とはいえ、上映していることに驚きと感激。いかにリピーターが、多いのかということでございましょう。

三度目の映画を鑑賞したあと、またゆっくりと、噛み締めながら二度目の活字の世界にひたっている今の私でございます。
 映像でも活字でも、心動かされる本当に素晴らしい作品でした。

追記

日本アカデミー賞十部門で、最優秀賞となりました。
映画「国宝」
私の国宝アンテナは、受信最高潮でございます。

山田とまと