定例句会

新春ミニ講演をお聴きして
「だから、川柳は面白い」(江畑哲男代表)の感想

定例句会

「だから、川柳は面白い」

江畑哲男代表

(講演録)新春ミニ講演をお聴きして

井上すず(八千代市在住)

新年句会のこの日、講演会場はぎっしりの参加者で埋まった。あまりの熱気にちょっとした気圧変化を感じるほど。ひそひその声がどうコダマしたのか、妙なざわつきへと変化する。

今回の講師は全日本川柳協会の副理事長、東葛川柳代表であり、川柳界では東日本の柱とも言うべき、江畑哲男氏である。まずは今回の能登半島地震に触れたあと、本題へ。

1.「日本語の魅力について」

これは講演内容を的確に表現した代表の著書があるので、そこからほんの数行であるが紹介させていただく。

「日本語は、漢字・カタカナ・ひらがな・という3種類(以上)の文字を持つ、世界でも珍しい言語である。右記以外にもローマ字・略称・記号・アラビア数字等々が加わり、日本語の表記を賑やかにしてくれている。」(江畑哲男著『アイらぶ日本語』学事出版より)

実のところ、句の内容は必死に考えるが、表記はついおろそかになりがちである。表記とは女性の化粧のようなものかもしれない。眉引くだけで別人に(笑)、最後の仕上げは大事、と実感した。

2.「人間って面白い」

ここで代表のサプライズがあった。何と、八代亜紀の「雨の慕情」をスマホで流したのである。会場の空気が一気に和む。しかも代表の「雨、雨、降れ降れ、もっと降れ」のあのさびの部分を、身ぶり手ぶりで示した。意外にもサマになっているではないか。会場にはどっと笑顔が。

しかし、言いたいのはそこではなかったらしい。誰もが覚えているこの部分。「憎い・恋しい」「嫌い・逢いたい」、このフレーズ。愛憎半ばする表現、である。スゴイ。知らなかった。阿久悠(作詞家)が凄い、と思ったら、川柳の先達の句にもあった。さすがである。

碁敵は憎さも憎し懐かしき 誹風柳多留初編

交番で生涯酒は飲みませぬ 安井八翠坊(明治期の作品)

何かあったらしい何でもないと言う 江畑哲男

これらの句には、「表」以外の「裏」の感情が読み取れる。脱帽である。

教務主任教務主任と使われる 江畑哲男

敬称で呼ばれているが、本当は便利に使われているという、自虐めいた趣向を感じた。いわゆる川柳の「穿ち」であろうか。この境地を詠むには、私には、ハードルが高い、高い…。

3.「ワークショップ言葉探し」

「次回の宿題『方角』に関連して思いつく限りの単語を並べてみましょう!」との代表の声に次々と手が挙がる、声が挙がる。さすがは東葛メンバーだ。

「東西南北、羅針盤、鬼門、恵方巻、子午線、風見鶏」(以下略)。さまざまな発想から来る類義語が会場内を飛び交った。

次の課題「触れる」についても、同様の演習を行う。

「和語を足すことで、更に発想が広がる」とは代表の一例として、「触る=肌ざわり、手触り、触れ歩く」などである。

レジュメには他にも、
(ア)類語(同義語)を探す
(イ)対義語(反対語)を探す
(ウ)派生語を考える
(エ)接頭語をつける
(オ)複合語(例・複合動詞)化する
(力)副詞や連帯詞の活用
(キ)オノマトペを考える
(ク)カタカナ語に変えてみる
など、言葉探しの「ツボ」が惜しげもなく記載されていた。

さて、帰りのザックには講演で得た様々な句作りのヒントがたっぷり。ぴかぴかの知識がこぼれないように、お茶をぐっと飲みほした。