近年の夏は、命に関わるような危険な暑さですが、それでも甲子園では高校野球選手権大会が開催されました。
試合開始時間をずらして、暑さ対策をした積りらしいのですが、それらは効果的だったとは思えず、この猛暑でもやるのかと、呆れたり心配したりする日々でした。
平素は、高校生のスポーツには全く無関心な私でも、高校野球が開幕すると、テレビの画面に誘われて、つい試合を観てしまうのでした。
昔の記憶では、高校球児は随分大きなお兄ちゃん達に見えたのですが、今では可愛い少年に見えて、それは私が歳を取ってしまったからでしょう。
大会が始まると、いつの間にか数少ない県立高校を応援しており、プロ野球選手を輩出している有名校は、推しの対象にはならないのです。
今年の関心事は、何と言っても4強に残った県立岐阜商業高校の健闘振りでした。
私立高校が全国的な規模でスポーツ少年を集めるのと比較して、岐阜商業高校は生粋の岐阜県代表であり、応援したくなったのでした。
また岐阜商業には、右翼手の横山温大君がおり、是非とも彼の活躍振りが観たかったのでした。横山君は生まれた時から、左手の指が欠損している障害がありながら、野球が大好きな努力家で、右翼手を任される選手に成長したのだと紹介されていました。
よし!横山君を応援するぞ!とテレビの前に陣取ったのですが、多分私と同様に、横山君に声援をおくった人は、多かったことでしょう。
優勝校の沖縄尚学高校は文武両道で、末吉、新垣の両投手が大活躍したのですが、二人ともハンサムだったので、つい応援に力が入ってしまいました。
この夏は、広島代表の広陵高校野球部が、寮内で暴力事件を起こして、世間をお騒がせしました。
広陵高校が、第2試合から出場を辞退したその経緯は、繰り返し報道されました。
大会終了後の報道では、広陵高校は「被害者を殴ったのは100発以上ではなく、数発だった」とか「被害者を取り囲んだのは10人ではなく、4人だった」などと、被害者側とは異なる説明をしており、真相は未だ不明です。
暴力が許されないことは論を侯たず、「何発殴ったか」は問題ではありません。
私が注目したのは、主催者、高野連、報道機関などからは、広陵高校野球部の寮生活の実態について、事実確認や問題点の指摘がなかったことでした。
高校1年生が、寮でカップラーメンを食べたら、何が問題なのか。
寮でカップラーメンを禁止する規則は、妥当なのか。
暴力を振るった高校2年生は、カップラーメンを食べた人を懲らしめる権限が与えられていたのか。
これら3点を含めて、広陵高校野球部の寮生活全般を把握しなければ、問題の核心には迫れないと思いました。私は、カップラーメンを禁止する規則は、世間一般の感覚からは遊離していると感じました。
また報道では、広陵高校野球部の加害者側が、被害者側を提訴したのでした。
提訴の趣旨は、被害者側が事件を世間に発信したため、「加害者側の個人名が広く世間に知られ、名誉棄損だ」との理由だそうです。
この提訴は、加害者側が被害者側を提訴しており、「被害者は誰か」を曖昧にする作用があり、関係者は面食らったに相違ありません。
少し前に甲子園で、慶應高校が優勝したことがありました。
その時、慶応高校の選手たちは全員有髪で、坊主刈りではないことが注目されました。
ごく普通の髪型が話題になるなんて、慶応以外の球児たちの自由度が問われており、全国の高校野球部では、陰に陽に暗黙のうちにも、坊主刈りが強要されていると思われました。
いつのことだったか、春か夏か失念しましたが、高校野球の誤審について、テレビで報道されたことがありました。
打球が、ワンバウンドして外野席に入ったのを、審判がホームランだと誤審したのでした。
その時、近くでその打球を見た外野手は、審判に「ホームランではなく、2塁打です」と申告すべきでしたが、外野手は審判に何も言いませんでした。
テレビの報道では、「外野手は審判に対して、異議申し立てをしない方が良いと判断して、何も言わなかった」と伝えていました。このニュースを視聴した人々は、どう受け止めたのかと、ずっと記憶に残る出来事でした。
私の視点は、審判の誤審は問題ですが、それ以上に問題なのは、高校球児が「真実を伝えるべき時に、沈黙したこと」でした。
機会があれば、若い球児たちに「カップラーメンは自由に食べて!髪型を決めるのは、あなたです!個人の選択は尊重されるのです!」と言うでしょう。
「必要な時には、決して沈黙しないで!」と言うでしょう。
私の川柳です。
坊主刈りさわやかと言い含められ