中野彌生エッセイ

玉子サンドは危ない

中野彌生エッセイ

先日テレビのニュースで、某コンビニエンス・ストアの社長が、日本の店舗の好調ぶりを、機嫌よく話していました。

外国からの観光客には、日本のコンビニの清潔さ・品揃え・サービスなどが好評らしいのですが。特にランチ用のお握りやサンドイッチに人気が集中して、その中でも「玉子サンド」は大変な売れ行きだそうです。

そう言われて見ると、欧米の街角でサンドイッチを買う人々を観察すると、ハム・レタス・チーズ・トマト・ケバブ・オニオン等を挟むのが主流に見えました。欧米のサンドイッチ屋で、日本風の玉子サンドに似たものは、一度も見たことがありませんでした。

テレビ画面のコンビニ社長は、これまで以上に海外の店舗にも力を入れて、好評の玉子サンドの販売を拡大したいと話していた様に聞こえました。

それを聞いて私は直観的に、外国で日本と同水準の玉子サンドを展開することは、相当な難題であろうと思いました。
あのふんわりとした玉子サンドを、あの綺麗な切り口で仕上げ、衛生的に包装することは、大変な技術を要するだろうと想像したのでした。
諸外国では、衛生観念が異なるであろう従業員に、日本方式を一から教育することは、大変な作業だと思われました。

玉子サンドの素材は劣化し易く、衛生状態を厳格に管理しないと、事故になると思われます。仮に全ての作業工程をロボットに任せたとしても、商品管理や賞味期限などの注意事項を、店舗と購入者の双方が守らなければ、問題を惹き起こすことが考えられるのです。

約30年以上も前の北米で、一市民がマクドナルドを告訴した事例を思い出しました。
訴えた市民の言い分は、
「マクドナルドのハンバーガーを食べた結果、それが原因で自分は肥満になった。この肥満の責任を認め、その慰謝料と治療費を払え!」
と、ざっとこの様な主旨だったと記憶します。

訴えた原告は、自分がマクドナルドのハンバーガーを選び、食べる数量を決定した事実には、全く責任がないかの様で、おやマア!と呆れるような告訴でした。

その裁判はどう決着したのか、残念ながら私はその裁定の結果を知りません。

また同じ時期に北米では、一市民が「自分のニコチン中毒は、タバコ会社の責任である」とタバコ会社を相手に、損害賠償を請求する訴訟を起こした事がありました。
日本人社会では、これらの訴訟沙汰について、日本では絶対に起こり得ないだろうと話題になりました。
これらの訴訟では、訴えた人々がどの程度本気なのか、何とも失笑を禁じ得ない話なのですが、実際にこんな訴訟沙汰が、外国では起きてしまうのでした。
最近では、米国大統領のトランプ氏が「自分を誹謗する記事を掲載した」と、ニューヨーク・タイムズ紙に、損害賠償を請求する訴訟を起こしたのですが、その請求額はなんと2兆円を超えるそうです。

もしも運が悪いと玉子サンドは、このような馬鹿げた訴訟で、攻撃されるかも知れません。
こんなスラップ訴訟は、結果的には勝利しても、相当な労力と時間とお金を費やすことになるでしょう。
果たして玉子サンドは、諸外国で無事に商売を展開できるでしょうか。
私は、玉子サンドは狙われる。マクドナルドと同じように、言い掛かりを付けられるかも知れないと心配するのでした。
某コンビニの社長に「危ないですよ!要注意ですよ!」とお節介をしたくなるのでした。

私の川柳です。

与太者が幅を利かせる新開地

年寄りの説揺るぎない経験値

中野彌生