五十歳になったころ、ラグビーのクラブチームに入れてもらった。またラグビーをやってみようと、何かの拍子に思ったからだ。クラブの名前を「房惑クラブ」といった。房惑クラブの房は房総半島の房で、惑は不惑の惑である。つまり千葉県に住む四十歳以上のメンバーからなるラグビーチームである。
東京には不惑クラブがあり、埼玉には武惑クラブがある。いずれも四十歳以上のおじさんラグビーチームである。パンツが色分けされている。四十歳台が白、五十歳台が紺、六十歳台が赤、七十歳台が金色と決まっている。紫のパンツがあるのは驚いた。紫のパンツは、何と八十歳台である。
このチームには紫のパンツはまだいなかったが、他のチームで、この紫のパンツの人が試合に出ていた。当然、走ることはできない。ほとんどボールには触らない。でも、ちゃんと試合に参加はしている。
一緒に試合を見ていた隣の人に訊いた。「あの紫のパンツの人、頑張っていますが、ポジションはどこなんですかね」答えは「ポジション ? ウロウロ」フォワードでも無く、バックスでも無く、ただウロウロしている「ウロウロ」なのだ。でも、ウロウロであっても素晴らしい。本来であれば三途の川原をウロウロしていてもおかしくない年齢だ。
さて、このチームは試合となると、めっぽう頑張る。ただし、きついのは相手のタックルよりも、味方の叱咤激励というか、罵詈雑言である。なにしろ体が思うように動かなくなっている。動かない体の分だけ口が動く。特に赤パンツの六十台との混成チームでは、五十半ばなど若手のバリバリである。従って叱咤激励も集中する。ああしろ、こうしろと、色々うるさい。こちらも五十過ぎである。動きたくても動けない。でも、一切お構い無しに、怒鳴られる。それで、思わず頑張ってしまう。その挙句に腰を痛め、肋骨を打撲し、体中を擦り傷だらけにしてしまう。
治るのも、以前のように一日、二日ではなくなってくる。一、二週間かかることが多くなってくる。これが、いつか、一、二ヶ月になってくるかも知れない。そうなったら、あんまり頑張らなくしようと思った。最後はウロウロだ。
