2025年クリスマスのテレビは、例年通りバチカンのローマ法王が、世界の人々に祝福の挨拶を送る様子を伝えていたのですが、その日は法王サマよりも、もっと私の関心を惹く報道がありました。
それは、フランス政府が新しい法律を作るというもので、私にとっては興味深く、また笑ってしまうようなものでした。
フランス政府は、生きているロブスターを調理することは、動物福祉(アニマルウェルフェア)に反して残酷であり、「生きているロブスターを調理することを禁止する」法案を検討中とのことでした。
そのニュースを観ていた夫は、「どの時点でロブスターを殺せば、法律違反にならないのかな?」と苦笑していました。
私はそのニュースを聞きながら、フランス人が、大皿の氷の上に並べた生牡蠣を、レモン汁を絞ってかけ、ツルリと旨そうに食べる図を思い浮かべていました。
あの牡蠣だって活きている筈で、活きた牡蠣をこじ開けて食することは、動物福祉に反するのではないか?と思ったり。ロブスターと牡蠣のそれぞれの生命に差異はあるのかしら?などと考えて、フランス政府の法案に疑義が生じたのでした。
その昔、古いフランス映画で観た料理の場面で、多様な食材の中に、生きた大きなウミガメが足を動かして、調理場の片隅にいたのを思い出しました。ウミガメのスープは広く知られた一品ですが、フランス料理では、あのウミガメは、いつ殺してどんな風に調理されるのかしら?と考えたのでした。
何ごとにも理路整然と筋を通すと思われるフランス人が、この様な動物福祉の法案をどう評価するのか、人々は政府案を容認するのだろうかと考えました。
この法案から、1970年代のロンドンでの一件を思い出したのでした。
当時、多少の驚きをもって報道されたのでしたが、数人のイギリス人男性が、ある日本食レストランを訪ねて、スッポン料理をしているところを見せて欲しいと頼んだのでした。その店の板前が要望に応じて、スッポン料理をして見せたところ、その男性たちは、「料理の仕方が残酷である。動物福祉の法令に違反する。」と言って、その場で板前を逮捕したのでした。この男性たちは「おとり捜査」の捜査官だったのです。
このおとり捜査には大層驚きましたが、ならばスッポンは、如何なる手順で調理すれば、合法的なのかと疑問に思ったものです。
イギリスでは、伝統的なキツネ狩りが良く知られています。この狩りは、農作物や他の動物保護の観点から、必要な年中行事らしいのですが、動物福祉には反しないのかしら?と思ったことでした。
その後、類似した事例では、オーストラリアでも、「海老を生きたまま調理することを禁止する」と伝えられましたが、いつ海老を殺せば、法令違反にならないのかな?と考える一方で、ビーフステーキなど肉類をたらふく食する国で、海老の福祉を語っても、説得力がないのではと感じたものです。
私など滅多に口にすることもない、贅沢な「白魚や海老の踊り食い」は、世界では全く許される筈もなく、動物福祉に反するものだと、前々から感じてはいたのですが。
「伝統の和食文化」の運命は、どうなるのでしょうか。
私の川柳です。
善人の振りしてグルメ遠のいた
方角は誰が決めるの恵方巻
