ぬかる道巻頭言コラム

【『ぬかる道』第421号 巻頭言】
川柳という宝物

ぬかる道巻頭言

巻頭言『川柳という宝物』

江畑哲男

とうとう、この日がやって来た。

令和4年(2022)10月22日(土) 、東葛川柳会創立三五周年の節目。ナント、今日の佳き日は大安に当たっているではないか。

まずは、皆さまに御礼を申し上げたい。有り難うございます。次に、今日の節目をお互いに喜び.感謝し・讃えあいたい。よくぞここまでやって来たものだ、と。

キッカケはさまざまであろうが、ともかく川柳という趣味に巡り会えたこと。その喜びを宝としたい。さらには、川柳を通じて生き甲斐や仲間を手に入れたこと。この喜びを記念すべき日に分かち合えるのは本当に嬉しい。

東葛川柳会が巻き起こした新風

東葛川柳会は昭和62年(1987)10月24日(土)、千葉県柏市内で産声を上げた。創立時の役員は、今川乱魚代表・江畑哲男事務局長兼編集長・窪田和子婦人部長(いずれも当時)であった。乱魚は当時52歳、哲男は34歳、和子は歳を明かさなかった(笑) 。いずれも、東京みなと番傘川柳会の同人であり、みなと句会の帰途に柏駅で降りて飲み直すメンバーでもあった。

振り返ればみんな若かった。現在も活躍されている幹部の多くは、40歳代の若さで当会に加わっている。

当時の写真を眺めても皆さん輝いていたし、「新年幹事会その他のスナップ写真を眺めても、若くて遊び心に満ち溢れていた」とは、笹島一江当会顧問の回想である。

東葛川柳会の登場は、川柳界に末曾有の新風を巻き起こした。手前ミソに非ず。西村在我『犬吠』編集長(当時)が絶賛したほどだった。その言をお借りしよう。

わが県下でも発足後一年有余しかまだ経っていないが、柏の東葛川柳会が眼を睦るばかりの異色の活躍をしている。この会はすぐれた指導者と恵まれた人材をスタッフに得、いままでに例を見ない新鮮味に溢れた内容の会を作り上げている。現在、会員数は優に100名を越え、句会当日の出席者数も何時も4~50名で、恐らく県下で毎月開かれている、どの句会の出席者数よりもはるかに多いのではなかろうか。その上、毎月の投句者数も40名を超えるのが常で、なかなかの盛況である。
この会の特色の一つに、毎回、伝統、革新などという傾向にかかわりなく中央柳界で活躍しているユニークな柳人をゲスト選者として招聘し、自由に考えを述べさせていることである。又、一題だけは三句連記制とし、選者が参加者の句を漏れなく一句は取上げるという方式で、新人育成の面では卓見と云えよう。出句終了後に全員で行う軽体操なども、楽しい雰囲気作りに成功をしている。
(『犬吠』平成元年八月号「編集室」)
東葛三五周年・自祝

あれから、満35年の月日が経った。

この間、一番トシとった(!)のはたぶん小生であろう。その小生を例に挙げれば、青年教師だった江畑哲男は、中年教師から老年教師に。そして3年半前、生まれて初めての手術を機についに現役を引退。44年の高校教壇生活にピリオドを打った。

中華人民共和国の武漢市発の、得体の知れぬ感染症が噂になったのが2年と10カ月ほど前だった。この感染症はあっという間に全世界に広がり、地球上の人々を恐怖に陥れた。民主主義国ほどその対策は後手後手に回ったように感じる。以後の推移は皆さんご承知のとおりである。

コロナ下での川柳活動は制限を受け、困難になっていく。折りしも現役を退いたばかりの小生は、会員のため、川柳会(界)のため奮闘する日々が続いた。ブログで、『ぬかる道』で、あるいは私信で、励まし発信をし続けた。

五月女暁星事務局長を筆頭とする裏方が、会務全般を支えてくれた。六斉堂茂雄編集長以下のスタッフは『ぬかる道』誌をより楽しく豊かなものにしてくれた。志田則保幹事は『ぬかる道』発送の手を休めなかった。船本庸子投句受付担当も会員との絆の維持に余念がない。棚田貞治会計部長を軸とする会計スタッフは危機を上手に乗り越え、知恵を出しながら明る<実務をこなしてくれた。上記のほか、見えないところで縁の下の力持ちはたくさんおられた。こうしたチームワークのお陰で、三五周年の今日を迎えることができた。皆さん、有り難う、ありがとう。

川柳界の3Kを超えて

にもかかわらず、課題は山積だ。川柳界はいま「3K」に悩まされている。「コロナ禍・高齢化・硬直化」の3Kである。かく言う東葛川柳会も例外ではない。

その一つ。この10月をもって東葛川柳会のHPが終了する。残念無念。しかしながら、諸般の事情で撤退もやむなしと自身に言い聞かせている。その一方、何か良いお知恵がありましたら、お聞かせ願いたいところでもある。

それにしても15年間、ボランティアとして献身的に作業して下さった根岸洋担当には、感謝の言葉以外見つからない。本当に有り難うございました。

眼を世界に転じれば独裁国家の横暴が止まぬ。国内を見渡せば、暗いニュースとトゲのある報道ばかり。もともと勤勉でこころ優しく、人情にも厚い日本の庶民が川柳的叙情や川柳的余裕を忘れるはずがなかろう。むしろ逆に、コロナ下ゆえに、川柳普及の土壌は整いつつあるように思える。小生などは秘かにそう確信している。

「いつも何かに挑戦する会でありたい!」、創刊間もない『ぬかる道』「あとがき」で江畑哲男は吠えていた。

35年もの間、当会と小生がチャレンジした項目を挙げていけばキリがない。それほど頑張ってきた。そこをあえて書かないで、ぐっと堪えて、DVDに歴史と足跡を残そうとしている。川柳界初の映像型記録集になる。このチャレンジにご期待あれ!来年早々には完成させて、新春句会の参加者全員にお頒けできるよう準備を進めている。

杜青春さんが来日・来会します!

おっと、朗報。東葛の記念大会に杜青春台湾川柳会代表がやって来る! 嬉しい。飛び上がるほど嬉しい。コロナもやっと下火になり、台湾当局は当会のためにその厳しい規制を緩和してくれた(笑)のであろう。有り難い。

上のほかの最新情報

祝電(すでに5通着)、賞状、表彰楯、加えてご祝儀まで早々に届いている(10/7現在) 。三五周年基金のご協力にも感謝(40ページ) 。川柳を愛する皆さんとこれからも歩み続ける。川柳という生涯の宝物を抱きしめながら。