巻頭言『近未来への伝言』
令和7年(2025)が本格的に始動し始めた。
改めて、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
会員各位のご多幸はもちろん、小誌『ぬかる道』関連の皆々様のご健康とご健吟をお祈り申し上げます。
年賀状拝受、感謝(ここで文体を変える)。値上げの影響もあり、今年はかなりの枚数減を予測していたが、そうでもなかった。NHKTV「おはよう日本」に、小生がインタビュー出演したおかげなのかも知れない(笑)。テレビの、とりわけ地上波の影響は相変わらず大きいようだ。
いただいた賀状の中にも、TV出演に触れているものがあった。オドロキや称賛の声。小生が突然テレビ画面に出てきたものだから、ビックリしたとか。「(先生は)変わりませんねぇー」という教え子の感想(注:変わっているに決まってるじゃん!、笑)。元上司や元同僚からもわざわざ電話を頂戴した。やはりテレビの影響は大きい。
年賀状今昔
昔なら(ムカシ話をするようになったらもう年寄り!)年賀状には、新年の決意や目標・意気込みなどを書き入れたものだった。「今年は英語に力を入れます」、「遅刻を減らしたいです」、「生徒会長として頑張ります」などなど、「決意」を書き記すのが年賀状の定番であった。
残念ながら、そういう年賀状を久しく見ない。年賀状文化の衰退とともに高齢化の影響であろう。人生の「守り」に入っている人が多い中にあって、なかなか決意らしきものは聞こえて来ない。
こうした中にあって、ふと立ち止まって眺めた年賀状があった。何通かあった。ご紹介する。
- ① 今年97歳になる三浦芳子さんの手書きの年賀状。芳子さんは、増田幸一当会顧問と同年代の会員である。
- ② 今年還暦を迎える教え子の賀状(教え子が還暦!)。ユニークな文面なので、引用しておこう。
「相変わらず、飛び回っているようですね。先生の元気な姿を見ていると、これから第二の人生を送ろうとする身にとしてはとても勇気づけられます」、とな。 - ③ 残念だったのは、戻って来てしまった年賀状。高齢のため、施設等に入っておられる方が多かった。
近未来への展望はいかに?
さて、「新年が本格的に始動し始めた」と書いた。実質的な新年号にふさわしい題材を探していたら、名古屋市在住の林 和利氏から貴重な資料を頂戴した。
タイトルの冒頭から引用させていただく。
十年後、日本の文化は、世界的レベルで高い評価を得ているであろう。典型は食文化。寿司・刺身・懐石料理から日本酒・和菓子に至るまで、フランス料理や中華料理を抜いて、断トツの人気を誇るレベルに達しているはず。ヘルシーで美味なることは言うに及ばず、視覚的にも美しい和食の評価は、すでに高まりつつある。それに準ずる形で、茶の湯の文化も、その価値が広く認められ、「わび」の魅力が世界を席巻するであろう。「源氏物語」の評価はすでにグローバルだが、さらに高まって、世界一の名作という評価が定着しているはず。能・狂言・歌舞伎・文楽もしかり。それぞれ早くに世界遺産に登録されており、その高い評価が常識になっているであろう。(『郷友』第472号、令和7年1月発行)
こうして引用するだけでも、嬉しくなる。少〜し賢くなった気もしてくる。何より、元気が湧いて来た。
林 和利氏は当会顧問で、当代有数の能楽研究者。今から七年前の東葛川柳会31周年記念川柳大会にて講演「狂言の笑いと魅力」を頂戴したのは、皆さんご記憶の通りだ。クリスタルホールでの講演だった。
日本の20年後はどうなっているか?
イイ話ばかりではない。少なくない年賀状からは、川柳界の現状を心配する声が聴かれた。抱えている会の厳しい現状を訴えたり、高齢化や後継者不足を嘆くホンネも漏れ聞こえてきた。言われるまでもなく、現状は深刻である。
ここで思い起こしたのが、一年半前の講演だ。令和5年11月、麗澤大学の特別講演会「正念場の10年」(衆議院議員・齋籐 健、前法務大臣)。メモ魔の小生のそのメモに従って、齋籐元法相の講演要旨を再現してみたい。
人口減少は非常に深刻。20年後には、ナント2000万もの日本人が消えてしまう。東京+千葉県の人口に相当する。豪州の人口が約2500万人。ほぼそれに匹敵する人間が消え失せるのだ。日本が別世界になる!
衝撃的だった。少子化をアタマで理解していても、切迫感はそれほどなかった。しかしながら、齋籐氏の出した数字というのは恐ろしいほどリアルだった。ぞっと、身震いがしたほどであった。
齋籐氏はもちろん、マイナスの情報を提示しただけではなかった。講演の本旨はむしろ逆だった。政権与党の実力者らしく、具体的な提言をも熱く語っていた。続けよう。
国語の教員で良かった!
紙数がなくなった。
小生の考える「川柳界の夢と現実」については、いずれまた書く機会があるだろう。今回は、林 和利・齋籐 健両先生の知性をご紹介するにとどめておく。
末尾ながら、笑われるかもしれないが、小生はいま勉強が楽しくつてしょうがない。乱読に雑学。系統立てての学問研究にはほど遠いのだが、それがかえって川柳の講座に役立っている。国語の教員でよかった!、心からそう思い返す昨今である。夢と現実の両眠み、リアルな眼力を持ちながら、近未来の川柳界の諸活動と関わり続けたい。