中野彌生エッセイ

驚愕について

中野彌生エッセイ

ハイドンの交響曲に94番「驚愕」がありますが、彼はその曲を創ることで、一体何を表現したかったのか、かねてより関心を持っていました。
彼が「驚愕」を作曲した意図を調べてみると、ハイドン自身が演奏をしている時に、居眠りをする聴衆がいて、失礼な!と腹を立てたそうです。
その聴衆を起こすために、大きなティンパニーの一撃を人れて驚かせ、叩き起こしたそうです。そして曲に「驚愕」と名付けたのでした。
こんな裏話から、ハイドンの隠れた一面を知ったのでしたが、あのバロックの巨匠から、そんな動機は想像出来ませんでした。
それにしても「驚愕」と言う曲名は、いかにも大袈裟過ぎると思いました。

「驚愕」と言えば、少々の驚きではなく、非常に強烈で、通常あり得ないことが起きて、驚いたことを指しているように思います。
私事ですが、最近、自動販売機で飲料水を買ったところ、出た釣銭が100円不足していたのでした。
100円なんて、どうでもいい金額にも思えますし、少し考えたのですが。
考えた末に、私が自販機に100円寄付する謂れもないし、自販機が繰り返し、他の人からも100円多く徴収するならば、それは不当なので、やっばり連絡しようと、自販機に表示された電話番号に連絡してみました。
電話の相手はアメリカ系の飲料会社で、すぐに用件の内容を理解して、書留郵便で返金すると言ったのでした。
数日後、その飲料会社から書留郵便で 100円玉一個が送られて来ました。
その会社は100円送るために、簡易書留料金を350円支払った筈で、私は吹き出すと同時に馬鹿らしくなりました。どうすれば双方にとって良かったのかな?と考えたのでしたが、答えは見つかりませんでした。
本当に呆れてビックリしましたが、「驚愕」と言うほどの事でもありませんでした。

いわき市の3・11赤飯廃棄は、大きく報道されて、詳細は広く知られていますが。
「東日本大震災の記念日に、赤飯は相応しくない」との一通の電話で、いわき市教育委員会が、2100食分の赤飯を廃棄したのでした。
戦中・戦後の食糧難を体験した私には、この2100食分の赤飯廃棄は、勿体なくて、信じ難く、心から「驚愕」致しました。
そして更に、私を「驚愕」させたのは、赤飯廃棄を決定したのが「いわき市教育委員会」だったことでした。
本当に「いわき市教育委員会」が、これを決定したのか?と、それはもう「驚愕」致しました。
「いわき市教育委員会」が、こんな判断をするなんて、その決定過程や如何に?と思い、私の「驚愕」体験では、驚愕度ナンバーワンでした。

近頃の報道で、世界中が「驚愕」させられたことは、米国のトランプ大統領が、自分自身を神になぞらえた画像を、SNSで投稿したことでした。
この画像は米国内でも批判され、直ぐに削除されたそうですが、トランプ氏は批判にも懲りずに、再度、自分を神に擬した画像を投稿したのでした。
世界には、自分を賛美する大統領がいるなんて、全く呆れて「驚愕」致しました。

私の川柳です。

怒るべきか呆れるべきか問題だ

中野彌生