巻頭言『”内向き”を戒めて』
東葛川柳会の6月の例会では、参加者が数年ぶりに70名に達した。句会の賑わいが戻ってきた。嬉しい。
前月号『ぬかる道』を改めてご覧いただきたい。8月号39ページに「我孫子市白樺文学館基金協力のお願い」を掲載した。いま同文学館の運営が危機に瀕している。
文学館や記念館の類いは儲からない。もっとも、儲けること自体を目的にしていない。建物の維持・管理以外にも経費はかかる。資料の発掘・蒐集、調査研究、職員の配置、設備の更新などなど、ご想像のとおりである。
吟行会でお世話になった我孫子市
白樺派というのは、雑誌『白樺』(明治43年創刊)に集った文学者や芸術家たちを指す。人道主義、理想主義を掲げ、武者小路実篤・志賀直哉・有島武郎らの名前が一般的には挙げられる。白樺派の文人たちは千葉県我孫子市と柏市にまたがる手賀沼の美しい自然に魅せられ、エネルギーを貰いながら、この地で創作活動を発展させた。
白樺文学館が開設されたのは、平成13年(2001)1月のこと。篤志家・佐野力氏が私財を投じて同館を建設した。たしか、コンピュータ関連の事業で成功された方と伺っている。その後、我孫子市との共同運営の時期を経て、同市による管理・運営が開始された(平成21年)。管理運営権の移管はおそらく財政事情からであろうと、勝手に推測している。(この項、白樺文学館HP参照)
当会や傘下の勉強会の吟行では、我孫子市を何度か訪れた。記憶をたどれば、東葛川柳会(平成2年、28年)、川柳会・緑葉(平成19年)、…。平成2年の吟行句会は、まだ同文学館が建てられる前のことだった。当会顧問山本鉱太郎先生による熱血ガイドを懐かしく思い起こす。
ついでに言及しよう。川柳会の企画ではないが、県立東葛高校在職時に江畑哲男は「リベラルアーツ講座文学館・博物館めぐり」を企画した。定年退職の年だったが、白樺文学館を皮切りに、田端文士記念館、上野鈴本演芸場、早稲田大学演劇博物館、東京都写真美術館を見学場所に設定した。いずれも県民の日や土日祭日など、生徒や保護者が参加しやすい日を選んでの企画だった。このユニーク教育活動は好評で、「人脈の豊かな江畑先生じゃないと出来ませんよ」などと褒められたりしたものだった。そうそう、その折には地元の越岡證子さんを講師としてお迎えしている(平成24年)。我ながらよく ヤッタ ものだと思う。
「義を見てせざるは勇なきなり」
さて、その白樺文学館。募金には当初から協力するつもりだった。会として数万円、個人として一万円。漠然とそんな金額を思い描いていた。
しばらくして、その考えを訂正。待てよ!、会の会計から支出するのも一案だが、会員の皆さんから浄財を集めたらどうか。ふとそんな考えがよぎった。
というのは、前項でも記したとおり白樺文学館と当会には右記のようなご縁がある。吟行句会のたびに、学芸員の方にお世話になっている。ここは広く呼びかけをした方がよさそうだ。館の窮状を訴える機会にもなるだろう。
会から基金を出してしまえば他人事になってしまう。身銭を切って募金するところに意義がある。同館に対する関心や参加意識も高まろう。ちょボラ(誰でも気軽にできるボランティア)の満足感や東葛会員としての帰属意識も得られるに違いない。諸物価高騰の折り恐縮ではあったが、右のような趣旨で募金活動を行わせていただいた。
「義を見てせざるは勇なきなり」「困った時はお互いさま」、そんなムカシからの箴言に背中を押されながら七月句会会場での募金箱回覧と相成った。
募金計、34,137円(有り難うございました)。句会の翌々日(7/24、月)午後、我孫子市教育委員会文化スポーツ課にお届けした。さらにその後、8,000円の追加募金を松戸市の老沼正一さんから預かった。今後、第二弾・第三弾のお志があれば、役所の窓口に再訪して哲男がお届けするつもりだ。感謝とともにご報告しておく。
柏市文化祭川柳大会のこと
話は変わる。
永見忠士副代表兼幹事長が頑張っている。代表の足らざるところを積極的に補っていただいている。新HPの立ち上げ、予約の取れなかった来年三月句会の会場の手当て、さらにはこの秋の大会の大会講師招聘、などなど。
来る10月28日(土)の柏市文化祭川柳大会あわせて東葛川柳会三六周年記念大会は、例年以上に賑やかになりそうだ。記念講演の講師として、高砂部屋の元おかみ・長岡恵さんをお招きする。演題「相撲部屋おかみの奮闘記」。
当会始まって以来のユニーク講師の来柏になる。永見忠士副代表には殊勲賞を差し上げたい。会場は柏市中央公民館5F 講堂。いまから楽しみ。乞うご期待!、だ。
7月下旬、その高砂部屋をスタッフ4人で訪ねた。永見副代表以外は初対面だったが、ご当人との打合せは終始和やかで万事順調。明る<気さくで、話題豊富な長岡さんとはすぐに打ち解けた。記念講演の成功間違いナシと確信。詳細は、本号『ぬかる道』表紙2 をご覧いただきたい。大勢の皆さまのご参加をお待ちしている。
川崎信彰副代表も頑張る。自らが会長を務める川柳会・新樹の七月例会に、台湾川柳会の杜青春代表が来会。その例会を会員以外にも無料開放し、日台友好のひとときとした。こういう企画は大いに歓迎し、激励したい。
コロナ禍以降、川柳界はいっそう内向きになりつつある。何か、一っでも二つでもよい、企画の大小にもこだわらぬ。川柳界の外側の人たちが注目し、彼らを巻き込むような企画や取り組みを進めていきたいものである。
「夏は読書」、さらに「行動の秋」へ
紙数も尽きた。「夏は読書」「夏こそ読書」は小生の持論である。読書は、川柳以外の世界をも容易に覗ける。
『栗山ノート1・2 』(栗山英樹著、光文社)、『日日是好日』(森下典子著、飛鳥新社)、『蝙されないための中東入門』(飯山陽&高山正之、ビジネス社)、『恋愛の日本史』(本郷和人著、宝島新書)、『徳川家康弱者の戦略』(磯田道史著、文春新書)。読書が、発想の貧しさからアナタを救ってくれるだろう。
さてさて、大会シーズンが秋風とともにやって来た。仲間と一緒に参加しよう。企画を応援しよう。行動の秋だ。