ぬかる道巻頭言コラム

【『ぬかる道』第447号 巻頭言】
『気分を新年に変えながら』

ぬかる道巻頭言

巻頭言『気分を新年に変えながら』

江畑哲男

とてもとてもそんな気分にはまだまだなれないのだが、仕方あるまい。この原稿を書いているのは、令和6年12月12日。雑誌の上ではすでに「新年号」である。ここは吉例に従って、新年のご挨拶を申し上げよう。
明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

各雑誌の新年号拝見

ちょっといたずら心を起こしてみた。各雑誌の新年号とやらを覗き見たのである。

一番気が早いのがオピニオン誌。『WiLL』や『Hanada』などは驚くなかれ、11月26日には新年号を発売している。そんな時期で新年の気分に果たしてなれるのだろうか?、と興味本位に目次をめくつてみた。両誌とも新年号の雰囲気がまるでなかった!
「逆襲トランプ2.0 」「石破政権の命運」「追悼西尾幹二氏」ほかで、新年号らしい特集は全く見られなかった(以上『WiLL』1月号目次より)。
そりゃそうだろう。11月末に発行するとしたら、原稿は10日には揃っていないとダメ。となると、識者の皆さんの執筆は10月末ー11月始めになる。10月末に「新年おめでとう」とは、さすがに書きにくかろう。「来年の世界情勢を占う」も、何だかしっくり来ない。

小生が川柳欄の選者を務める『正論』の発売日は当月の1日。執筆のタイミングを考えたら、10月中旬には「来る2025年の国際情勢を予測する」という特集にしないとイケナイ。これまた相当の無理が伴いそうだ。

そんな中にあって、『将棋世界』(マイナビ出版)が良かった。月刊『将棋世界』の発売日は毎月3日。オピニオン誌より一週間ほど遅いが、その新年号は年の始めにふさわしい特集を組んでいた。「日本将棋連盟、次の100年へ」。ご存じの方はご存じだろうが、将棋連盟(羽生善治会長)は発足してちょうど100年が経つ。昨今の将棋ブームと相まって、次なる100年に向けてさらなる飛躍が期待される。その期待に応えた特集になっている。総合雑誌の雄・『文藝春秋』はどうか。「昭和100年の100人」という特集を組んでいた。さすがは『文藝春秋』。文豪・菊池寛が私財を投じて創刊しただけのことはある。同誌は大正12年(1923)1月創刊(実際の発売は前年末)。100年超の風格が感じられる。

『ぬかる道』誌自慢

翻って、わが『ぬかる道』誌。いやいや、なかなか堂々たる中身である。そう、誇ってよい。

まずはその速報性。多彩な読み物。低レベルでない鑑賞文やエッセイ。出色のジュニア川柳欄。双方向の「声」の欄。目配りの効いた全国柳界の動き、等々。自画自賛すれば、巻頭言の視野の広さと質の高さも挙げさせていただこう。編集長にはご苦労をおかけしているが、「何でもいいから原稿をクダサイ」という安易な姿勢を『ぬかる道』は取ってない。

『ぬかる道』自慢をさらに続ければ、「添削コーナー」。「川柳再考Before&After」(12月号30ページ)。下段の五句目をご覧いただきたい。
「数多の失敗苦みも隠し味」(N.M)が「失敗の数多苦みも隠し味」に直されていた。語順を変えては?という提案だったが、この添削はじつにお見事である。わずか二行の解説文を付しただけだが、加藤当白講師の一句にかける意気込みのほどが窺われる。投句者の皆さんは幸せである。たぶん、そう思って下さるに違いない。

昨年の活動を回顧しながら

ついでに、我が一年をも振り返ろう。

令和6年(2024)は講演行脚の年になった。講演は東葛地域を除いて、全国で13カ所に上った。いやはや、我ながら驚いている。海の向こうの台湾を皮切りに、東京、北海道、秋田、金沢、静岡、岐阜、埼玉と川柳の魅力を説き歩いた。泊を伴う地方では温かく迎えられた。川柳(人)は熟い!それぞれの地で皆さんにお世話になった。記して御礼を申し上げる。

講演の対象は川柳人ばかりではなかった。一般向けのオファーも少なからず頂戴した。労働組合、老人大学、校友会、学習サークル、ほか。「日本語の魅力」も「川柳の魅カ」も話は尽きない。ネタに困ることはなかった。

「公募川柳」の審査にもいくつか関わった。コロナの最中から感じていたことだが、世間の川柳に対する期待というのは私たちの想像以上に大きい。「もっと楽しく、もっと前向きに生きたい」という願いの表れであろう。

公募川柳ジュニア版でも川柳への期待感が感じられた。「5・7・5でめざすよりよい未来小学生SDGs 川柳コンクール」(朝日学生新聞社主催、ニッセイアセットマネジメント協賛、国連広報センター・環境省・地方創生SDGs官民連携プラットホーム後援)。長ったらしい正式名称のこのコンクールには、前年比ナント1.6倍(3万6000余句)の応募数があった(短信に関連記事)。

最終選考の場で小生が申し上げたこと。

  1. ① 川柳に着目していただいて、有り難うございます(=感謝)。
  2. ② 川柳というのは、「入りやすくて奥が深い文芸」です(=PR)。
  3. ③ 川柳の創作を通じて、日本語の豊かさにも思いを馳せていただけたら有り難い(=希望)。

こんなちょっとした場でも、川柳の普及と川柳文化の向上を忘れていない。地道な努力は明日につながる!

ところで、今号『ぬかる道』発行日は12月28日(土)だ。発送はその日の午後になる。昨今の郵便事情も考えると、ひょっとしたら到着は元日になるかも?まさしく「明けましておめでとう」になるかも知れない(笑)。

おめでとうは続く。1月25日(土)新春句会に、小島蘭幸理事長来柏。新春にふさわしい会になりそうだ。