ぬかる道巻頭言コラム

【『ぬかる道』第436号 巻頭言】
『愛すべき川柳句会』

ぬかる道巻頭言

巻頭言『愛すべき川柳句会』

副代表 川崎信彰

コロナの影響で、全ての趣味の会が苦しみました。私が参加している古代史の会もメンバーは半減しました。ここ2〜3年様子を見て継続を考える状況です。

私の川柳人生は誘われるままにいくつもの吟社に通い、沢山の柳人と交流させて頂いています。指を折ってみると毎月出席または投句をする吟社は10指に近くなっています。通っていますと、どうしても当会の事を考えてしまいます。

場当たり的ですが、感じたことを以下報告いたします。

東京みなと番傘

コロナが下火になってから目覚ましい活況を呈しています。今年は60周年の記念句会を予定しています。会長も犬塚こうすけさんから青木薫さんに交代、手腕をふるっておられます。今年になって入会された方が沢山おられます。

みなと句会と言えば、何と言ってもユーモア句、菊池良雄さん、丸山芳夫さん、辻直子さんらがいますが、最近埼玉川柳社から織田和子さんが参加され、この方が活気をもたらしています。句づくりが半端ではない位エネルギーがあるのです。どうしても天位に取りたくなる作風、周りに影響を与えています。

また司会は着流しで来る外沢とくろうさんで、独特の雰囲気囲気で句会や待ち時間を引っ張っておられます。課題もユニークなものがよくあります。最近は「それを言っちゃおしまいよ」(詠み込み不可)がありました。披講の度に爆笑がありました。時々行う席題も軽妙な句が出てきます。

メンバーは競いながら楽しんでいます。もう―つは終了後の飲み会です。出席40名のところ、飲み会には男女20名前後が参加し親睦を深めています。また結束を感じるのは沢山の方が句会活動に参加されていることです。受付、体操、句会次第の書き垂れ、句会の入力、いろいろやっています。心配は芳夫さん、良雄さん、河野なかばさんの健康状態です。

川柳新潮社

千葉県では一番古い吟社になっている。市川は昔から柳人が多数居を構えており、新潮社は関係がいろいろありました。

話は変わりますが、この吟社は「競吟」の部類に属します。川柳は元々江戸時代からこの競吟から発展しました。選者(点者)が選をしてその位ごと前抜き、秀句、客、三才に得点を記録係が集計して、賞金や賞品を競ったものです。現在も記録係集計して10位くらいまでは賞品を出しています。

私は競吟には余り興味なく、マイペースで句作りをしていましたが、ここ4〜5年競吟に興味を持っています。成績は選者次第ですが、それでも抜いてもらうために死力を尽くすのです。漢字、用語、字体に気を配り、独りよがりでなく妥当な句を作るのです。格調も要りますが、必須なのは説得力です。共感がないと抜けないと言うことを思い知らされています。

競吟が川柳の伝統的なスタイルだと最近、思い出しています。一昨年代表をされていた川口雅生さんが体調を崩され、そこで同人の結束があり、一糸乱れぬ体制で句会を運営されています。

嬉しいことにその後雅生さんが奇跡的に体調を回復されつつあるという報告がありました。課題も4題、当日課題も1題に簡略化されています。参加者は作句でのスリルを味わっています。人数は往時は50名を楽に超えていましたが、それに近づきつつあります。代表は予想通り矢嶋もと之さんが就任されました。彼が東葛のメンバーになったのは、句会運営の参考にしようと思ったところもあると想像しています。

川柳江戸川吟社

新潮社と同様の競吟の句会です。会長の福井勲、光子夫妻を中心に小気味いい活動をされています。以前は駅から徒歩20分かかる神社の集会所を永らく使っていました。選の時間は酒が用意されており雑談の花が咲きました。最近はお見掛けしないが、酒豪の中島和子さんが帰りがけに飲み会をやっており、何度か参加しました。句会場は小岩駅に近いコミュニティ会館。小岩区民館に会場が変わり、便利になりました。大会は江戸川区文化会館の素晴らしいホールで、その日は酒も出ていました。

新潮社も同じですが、句会報がB4用紙1枚にまとめられていることで、句会成績、得点状況、次回予告、全てが網羅されており、東葛もこれで良かったら楽だと思いました。

この句会にはあの島田酪舟さんが来ます。着席してから約1時間余りで20句あまり作り、最高点を取ります。私から家で構想を練って来ているのかと質問したら、その場で作句しているとのこと、若いうちから訓練されていると言っていました。それにしても軽妙で非凡な作風でありました。

この句会には我が句会の大竹洋さんも顔を出し、賞品をごっそり持ち帰っています。この句会では女性の柳人の活躍が目立ちます。夫婦、家族、日常茶飯事、共感のある作品が沢山出ます。女性でも平蔵柊さんは性別のない格調ある句を出されています。

つかだ川柳会

わが家から一番近い句会場、食事会、吟行会楽しい句会でしたが、高齢化、脱会者が続き、解散の論議をいたしましたが、残っているメンバーと講師の津田暹先生が誌上句会での続行を承諾して、今も毎月課題句1句、自由吟2句を提出。津田講師の懇切丁寧なご指導をいただいております。体調を崩された志田則保会長も作業を継続して頂いております。全く頭の下がる献身であります。

台湾川柳会

代表の杜青春さんは台北のみずほ銀行勤務でしたが、現在は退職されています。先日彼より我が川柳会・新樹を訪問したいとの申し入れがあり、慌てて句会開催の段取りをとりました。句会での目玉は台湾有事についての現地の状況の報告を期待しましたが、我々が考えている程の緊張状況に至っていないとの発言がありました。中国大陸で勤務や経営を継続している台湾人が多く、有事は現実的ではないとの考え方でありました。

台湾川柳会は3月に30周年、我々は来台を期待されています。台湾川柳会も高齢化が進行しており、今後の発展が心配です。台湾に日本語の川柳会が30年も続いているということは貴重なことであります。日台友好は形になっています。

印象吟句会 銀河

『川柳マガジン』の川柳年鑑の紹介文に島田駱舟さんは、「感性はいくつになっても磨くことが出来ます。センサーであるシナプスは脳トレによって増やせます。印象吟で脳トレをしましょう。文字題では使わないシナプスを使い、感性を深めましょう」と叫んでいます。

特筆したいのは、提唱者である駱舟さんの句会に対する献身的な活動です。丁寧な送迎、音楽、写真、図形,フレーズ、当日出題の摩詞不思議な手製品自筆入りの手紙連絡、5回参加で500円バック、全ての事に気にかけています。句会の出題は3題は出席者、投句者向け、後3題は出席者向け、この会の特徴は投句者が圧倒的に多く出席者の倍以上になる。

従って共通の出題は投句者の入選が圧倒的に多い。

駱舟さんの選はない。事前か当日依頼された選者である。先ず第一印象では全く歯が立たない。出題のほんの一部から句作りのヒントを探ることになるので、脳のどこかが懸命に動き出す。選をすると投句者の鋭い感性、エネルギーを感じてしまう。それがメリットなのでしょう。

私はそれ以外に印象吟は苦吟の必要はない、感性の導くままに句作できるので、出来は別として怠け者にとっては楽ちんと思っています。印象吟は廃れることは無いように感じています。

会場は人形町から5分の区民ホール、大きなホールでコロナ感染の危険は全然ありませんでした。

野田川柳会

東葛川柳会傘下の勉強会であるが、着実な活動を続けて野田市の文化レベル向上に貢献されている。

野田市は昔、常磐線が通る計画があったが、住民は汽車の騒音と煤煙を嫌って拒否したとのこと。その結果、松戸市や柏市が発展をしています。その間野田市は地場産業野田醤油の協力を得て発展しました。

野田川柳会は15年目ぐらいになるが、感心するのは吟行会、市民川柳大会、数多くの懇親会を成島静枝会長がリーダーとなって毎年続けていることです。

大会のアトラクションは地元の落語会やフラダンスの会などを動員、吟行先は産業から自然観察施設、公園など野田市内で十分間に合う活動が可能です。

句会の方は遊人(松澤龍一)という個性的で面白い柳人がリードされております。兎に角、結束のいい元気な羨ましい句会です。

川柳みるふぃーゆ

船橋市で千葉県川柳作家連盟の主催の新人講座を母体にして、津田暹さんのご協力を得て目覚ましい発展をしています。リーダーの島根写太さん、中嶋常葉(ときは)さんのコンビが目を見張る程の動きを見せて、目覚ましい発展を続けています。

リーダーの写太さんは「句会はかくあるべし」という信念に基づいて運営をしています。課題吟、印象吟、ユーモア句、自由吟等多岐にわたり、句会が終わると椅子を円形に並べて、選者を囲んで選の感想を述べて、論議する、終わったら飲み会で親睦を図る。

兎に角句会でやるべきことに何でも挑戦しています。最近は「全国誌上句大会」と称して全国の著名な選者に選を依頼して誌上大会を全国規模で開催したところ、予想以上の反応があって面白い作品を沢山集めています。

お二人は目的に一直線でコマーシャルもせっせとやります。先日、江畑代表の好意で、選者に写太さんと常葉さんを呼んだ時、二人は「みるふぃーゆ」を詠み込んだ句を全部抜いていました。

筆者は仲間だった写太さんに2年間無事に経過したら展開があると言っていましたが、5年足らずで恐ろしい知名度を上げています。写太さんの一直線の行動力、それをカバーする常葉さん。まだまだ前進は止まらず、凄い句会になるかも知れません。

川柳会カトレア

筆者が関係している勉強会です。

報告したいのは一緒に活動している佐竹明吟さんのことです。彼は川柳初心者講座の活動を志して、5〜6年前、東葛、新樹、つかだを退会しました。

初心者講座はすでに7〜8位創設して、川柳初心者を沢山導いています。富士山裾野のような初心者層を黙々と導いています。この講座を卒業して次の吟社に入会された方がたくさんいます。カトレアもその一つです。もう5年になりますが、日増しに腕があがっています。

詠み込みや中八の話もしますが、江畑代表のテキストをベースに作句の姿勢を話し合っています。

佐竹さんの話では、ある小学校で親子川柳会の指導進行の依頼を受けたとき、校長先生は生徒に川柳の話をしたいが、図書室にも、本屋にも川柳のやさしい入門書が無いと言われたとのことです。川柳界が考えるべきことと思いました。

川柳人の中で佐竹さんのような方が川柳を支えているのです。幼い時一度でも川柳に親しんだら、後に川柳を志すきっかけになると思っています。佐竹さんの活動はなかなか出来ることではありません。

東葛川柳会

振り返ってみると、このなかの川柳会のどれにも東葛川柳会は該当していません。

東葛川柳会は参加者数、句会誌『ぬかる道』の充実、傘下の勉強会の数、年2回行う大会、句会の選者の内容、毎回新しい人や珍しい方が句会に顔を出します。

東葛句会に興味を持たれている方、句会で自分の腕を試したい方、運営に興味を持っておられる方、いろいろです。東葛の特徴は決して簡略化、合理化をしないことです。コロナ禍や高齢化の影響で最近は困難にも直面していますが、句会のあるべき姿を目指して正道を歩んでいます。

東葛は決して堅苦しくない、緩やかで、自由な雰囲気を江畑哲男代表は尊重し、心がけています。柳界では東葛の方が特異なのかも知れません。川柳のあるべき姿を目指して、決して妥協をせず進んでいます。東葛川柳会の主たる成分は好奇心です。そして、いつも楽しい句会、充実した句誌『ぬかる道』を目指しています。