ぬかる道巻頭言コラム

【『ぬかる道』第462号 巻頭言】
『全日本川柳東京大会』

ぬかる道巻頭言

巻頭言『全日本川柳東京大会』

江畑 哲男

全日本川柳東京大会の会場が決まった。会場問題で当初つまづいていたのだが、決着を見た。良かった!

正式名称は「第五〇回全日本川柳2027年東京大会」である。主催は一般社団法人全日本川柳協会(理事長・小島蘭幸)と、東京大会実行員会(実行委員長・いしがみ鉄、事務局長大野征子)。開催日は令和9年5月30日(日)、第五日曜日。会場は、東京藝術大学上野キャンパス奏楽堂に決まった。良かった、良かった。

東京藝術大学は、日本で唯一の国立総合芸術大学である。歴代校長及び学長(時代によって呼称が違う。含む美術学校長、音楽学校長)一覧に目を通せば、岡倉天心、伊沢修二、嘉納治五郎、矢田部良吉、平山郁夫、日比野克彦らの鉾々たるビッグネームが並んでいる。

奏楽堂と言えば、わが国最古の西洋音楽の殿堂である。1100席を有し、現代最高峰の音響空間として名高い。

詳細はこれからの検討に委ねられるが、会員各位におかれては、まずは今からこの日をご予定いただきたい。

上野=文化の杜

そもそも上野は、伝統文化と近代芸術が融合する地である。江戸時代から続く伝統文化あり、明治以降の近代芸術あり。両者が上品に融け込んだ、日本を代表する一大文化圏になっている。

とりわけ、上野恩賜公園には美術館や博物館が集中しているのはご存じの通りだ。東京国立博物館、国立西洋美術館、東京文化会館、などなど。少し離れるが、東京芸大美術館もなかなかのもの(小生の推しの一つ)。質の高いアートが堪能できる。どれもこれも、緑豊かな環境と現代的で歴史的な建造物が調和している。そこが素晴らしい。

散策の地としての上野もまた良し。何といっても、不忍池。上野東照宮、旧寛永寺五重塔、旧岩崎邸庭園・・・・・・

年の瀬のTVに必ず登場するのがアメ横商店街だ。通称「谷根千」(谷中・根津・千駄木エリア)も良い。外国人に大人気らしい。このレトロさがたまらないと、母国語でのたもう。おっと、鈴本演芸場も忘れてはならぬ。

そう言えば、東葛川柳会や傘下の勉強会の吟行会でしばしば訪れたのが上野界隈だった。東大にも行った。森鵡外記念館や水月ホテル鵡外荘にも立ち寄った。公園内の句碑(尾藤三柳、村田周魚)巡りもした

アメ横で安酒を呻った。伊豆榮本店では鰻を食べた。日川協恒例の新年会は精養軒本店で毎年開催している。

江畑哲男推しの上野は?

ガイドブックのようになってもイケナイので、江畑哲男の個人的な「上野愛」を列挙してみよう。

  1. やっぱり国立博物館がイチオシ。晩年の森鵡外が総長を務めたことでも知られている(旧・東京帝室博物館)。ここで鵡外はかの労作「元号考」に取り組んだ。
  2. 台東区立したまちミュージアム。銭湯や昔の玩具、町並みなど「昭和レトロ」が満喫できる。穴場だ。
  3. 正岡子規記念野球場。知る人ぞ知る名所。少々狭いが、東京のど真ん中で草野球が楽しめるのはオドロキ!ついでに、日暮里まで足を延ばして正岡子規の旧居「子規庵」を訪ねては如何か。子規の好物だった羽二重団子はお土産にどうぞ。
  4. (笑うこと勿れ!)小生の推しの最後はじつは大道芸。公園内では多種多様の大道芸や演奏がいつも行われている。通人は少し立ち止まってそれを見るものだ(笑)。
    昔は「大道芸人」と呼んでいたのだが、現在ではヘブンアーティストと呼ぶそうな。そのヘブンアーティストを制度化したのが石原慎太郎都知事(平成14年)だった。ライセンスを与えて、日本人の器用で質の高い大道芸はもちろん、世界の芸人が秋葉原や上野をなど大都会に集まるようになった。慎太郎らしいアイデアと実行力だった。

《参考》・・・それともう一つ、これも私の趣味にかまけての試みだったが、殆どの人が見向きもしない大道芸人を育てるため、その道の達人たちに審査をしてもらい、合格した連中には都からライセンスを与え、あちこちの町に設けられている歩行者天国などで晴れて得意の芸が披瀝できる制度をつくり出した。(ニューヨークなどのメトロアーチストへの言及)

最初の選抜芸人たちのパフォーマンスは秋葉原でやったが大成功で、それを聞いて日曜の銀座の大通りの歩行者天国で行ったらこれまた大人気だった。軒を並べる店舗の前の歩道にまで人が溢れる大盛況で、こうした無名な連中の中からも素晴らしい芸人が育ち、東京に限らず地方の町や中には外国からも呼ばれて大道芸を披露する手合いも数多く輩出したものだった。

(『「私」という男の生涯』幻冬舎、300ページ)

……、かくして東京大会実行委員会が動き始めた。会場問題が決着して、実行委員会のムードが明るくなった。イッキに前に進んだ。今後の課題はいくつかあるが、いしがみ鉄実行委員長の旗振りで、前進していくことであろう。期待をし、かつ応援をして参りたい。

台湾での研究発表(台湾での予定)

話は変わる。この巻頭言を入稿して3月11日(水)朝、台湾に向かう。その台湾での予定を記しておこう。

  1. まずは、翌12日。台北市内の大学での講義がある。日本文学専攻の若い学生に講義を聴いて貰えるのは、何よりの楽しみである。講義はモチロン日本語で行う。
  2. 「豪濁日本語文学会」での発表。演題は「日本から見た台湾の川柳及び川柳会」。こちらはやや緊張する。というのは、当然のことながらアカデミックな内容が求められるからだ(学会の会場は國立豪中科技大學)。

前者では、中国文化大学の沈美雪先生にお世話になる。後者では、静宜大学の頼術宏先生のお引き立てがあった。

嬉しいのは、発表の機会を与えられたこと。70歳過ぎて勉強ができること。困っているのは、台湾の漢字の難しさ。何しろパソコンに該当の漢字が出てこないのだ。

一点、今回の訪台で自慢できることがある。

台湾の文学会と日本現代詩歌文学館との橋渡しが叶ったこと。ご承知のように、岩手県北上市にある日本現代詩歌文学館(館長・高野ムツオ)は詩歌に特化した全国唯一の総合文学館である。世界的にも珍しい。

その文学館と資料の交流という形で、日台のつながりが出来るとしたら、最高に嬉しい。両国の研究の飛躍的発展にもつながるであろう。それでは、行って参ります。