ぬかる道巻頭言コラム

【『ぬかる道』第422号 巻頭言】
改めて、東葛川柳会

ぬかる道巻頭言

巻頭言『改めて、東葛川柳会』

江畑哲男

10月22日(土)の東葛川柳会三五周年記念大会は、成功裡に終わることが出来た。皆さんのおかげ。有り難うございます。当初はリアル大会の開催さえ危ぶまれていた。そんな夏ごろとは打って変わって、事前の予想をはるかに超える盛会となった。改めて御礼申し上げたい。

国文祭おきなわから帰って

東葛の大会が終わって、一凋間後の10月29日(土) 。小生は、今度は沖縄県に向かっていた。以前にも書いたように、「第37回国民文化祭第22回全国障害者芸術・文化祭美らおきなわ文化祭2022 響むまち・豊見城川柳の祭典」が10月30日(日)に開催されるのだった。この事務方の仕切りが待っていた。

沖縄行きの航空便は満席だった。掛け値なしのぎっしり満席。参加者の皆さんビックリするほどの混みようだった。このあたりにも、TV? 新聞のコロナ報道と、現役世代が日々接している現実世界との乖離がある。情報弱者とまでは言わないが、マスコミ報道を鵜呑みにするのはもういい加減に止めた方がよろしい( 『ぬかる道』4月号巻頭言「日常 vs TVの非日常」参照) 。

ソレはともかく、国文祭おきなわ川柳の祭典。事前投句者1,114名、当日出席者123名。当日出席者は少なかったが、内容はすばらしかった。充実した内容だったと、胸を張って言うことが出来る。

台湾から選者としてお招きした杜青春氏をはじめ、TV等で活躍中のやすみりえさん、他にも「絵になる」選者の皆さんが壇上に勢揃いしたときは嬉しかった。意欲的な人選だと川柳仲間からも褒められた。また、二次選者には今回初めて文芸評論家の荒川佳洋先生をお迎えした。この点を評価してくれたのは同じ二次選者の松代天鬼氏であった。沖縄から帰って早々に激励メールを頂戴している。

それにしても、大会一つ・イベント一つを企画し、それ実行することの難しさよ!心身ともに大変だった。

現地沖縄の川柳協会をはじめ、関係者の皆さんには改めて御礼申しあげたい。とりわけ、豊見城市教育委員会文化課のご尽力は献身的であった。皆さんのご奮闘がなければ、ここまでの成功はなかった。記して、感謝申し上げる次第である。

沖縄からの帰りの便では、こんな短歌が思い浮かんだ。

こころよき疲れなるかな
息もつかず
仕事をしたる後のこの疲れ


(石川啄木『一握の砂』「我を愛する歌」より)

東葛川柳会の特長は?

ひるがえって、東葛川柳会。

既成の吟社とは、どこか違うらしい。「一味違う」「何かが違う」と、他吟社の幹部からもよく指摘されるところだ。いったいどこが違うのか?、何が違うのか?、そのあたりを三五周年にあたって探ってみたい。

まずは、他吟社の大多数は丸ごと「作家集団」だということ。句会がないと夜も昼も明けないという、句会大好き人間の集まりである。いわゆる「句会屋」が多い。もちろん、川柳の魅力は句会の魅力と重なることが多い。東葛川柳会の句会も賑わっているのは大変有り難いことである。

この「川柳を愛する」という点では他吟社と同じなのだが、東葛の場合はそこだけに留まっていない気がする。川柳を愛し、「川柳的文化」とでも呼んだらよいのか、そうした指向の方々が少なくないのだ。川柳を軸とした日本文化を愛する人たちの集まりになっている、と言い換えることも出来ようか。

それゆえ、ドナルド・キーンについて語っても何ら違和感がない。むしろ好意的に受けとめられている。傘下の勉強会では期待さえされている。

見方を変えれば、「川柳に丸ごと熱中している訳ではない」ということなのかも知れない。この東葛の特徴は、代表としてはある意味で「痛し痒し」である。広く大きく川柳仲間を包み込んでいくという点ではプラスなのだが、他吟社のように「川柳熱中症患者」ではない恨みもさびしく感じてしまう。もっと真剣に川柳に取り組んでくれれば、もっともっと上達するのに…… 。そんな素材が少なくない。もったいないと思う。

「楽しく学べる」東葛川柳会

視点を変えよう。

東葛川柳会は「生涯学習社会」の申し子である。「川柳会・新樹」を筆頭に、勉強会のほとんどすべてが高校や大学などの教育機関を母胎として生まれ、発展してきた。だから、講師の話を聴こうとする。少しでも、賢くなろうと努力をするのだ。

『川柳マガジン』年鑑の「全国川柳結社欄」にはこう寄稿した(本年年鑑からこの項がなぜか削除されている) 。

〔東葛川柳会〕

昭和62年創立の当会も、平成を経て令和の時代へと突き進む。楽しく学びあう句会、読んでタメになる『ぬかる道』、志高い巻頭言、HPやメーリスの整備など、デジタルとアナログの2ウエイで、コロナ下でも更なる発展を目指す。

・・・・・・ゲスト選者方式を取る東葛句会の特徴も、学びの姿勢の表れと思っていただきたい。人間幾つになっても勉強。好奇心は失いたくないものである。

はてさて、猛暑の夏が過ぎたかと思えば、すっかり冬の出で立ちとなった。

三五周年記念大会時に頒布した『いちめん菜の花』(鎌田ちどり、喜怒哀楽書房)と相前後して、当会仲間の句集発刊が続いている。

『つぶやき』(岩波敬祐)、『丸木橋』(片野晃一)、『老い盛り』(成島静枝、以上いずれも新葉館出版) 。前号、前々号の『ぬかる道』誌で紹介した句集と併せると、川柳界が再び活気づいてきたようで、何とも喜ばしい。

そうこうしているうちに、ビッグニュースが飛び込んだ。加藤当白さん(南アルプス市)が、『川柳マガジン』大賞を射止めた。快挙、大快挙!おめでとう!! 本誌連載中の「川柳再考」(=添削教室)がいっそう輝いて見える。